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『君の名は。』アカデミー賞の可能性は?前哨戦&ライバルから予想してみる。

      2016/12/12

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新海誠監督の映画『君の名は。』が第89回アカデミー賞長編アニメ映画部門の審査対象作品に選ばれました。

日本の作品では他に原恵一監督の『百日紅 Miss HOKUSAI』、スタジオジブリの新作『レッドタートル ある島の物語』、FINAL FANTASY XVのアナザーストーリーを描いたCG作品『Kingsglaive Final Fantasy XV』が、最終ノミネートの候補となっています。

はたして『君の名は。』のアカデミー賞へのノミネート、さらに日本勢としては宮崎駿監督『千と千尋の神隠し』以来の受賞の可能性はあるのでしょうか。予想してみたいと思います。

▼『君の名は。』のヒットの理由を探った記事も書いています。

前哨戦の結果は?

アカデミー賞を占う上で参考になるのは前哨戦といわれる各賞の結果です。以下、主要な映画賞について見ていきたいと思います。

ロサンゼルス映画批評家協会賞を受賞

lafca出典:http://www.lafca.net

『君の名は。』は2016年12月4日、アカデミー賞の前哨戦とも言われるロサンゼルス映画批評家協会賞最優秀アニメ賞を受賞しました。※スタジオジブリの『レッドタートル ある島の物語』が次点。

日本の作品としては、過去に宮崎駿監督『千と千尋の神隠し』、高畑勲監督『かぐや姫の物語』がこの賞を受賞しています。両作品ともその後アカデミー長編アニメ映画賞にノミネートされ、『千と千尋の神隠し』はみごとオスカーを獲得しました。

では、ロサンゼルス映画批評家協会賞(以下、LAFCA)の過去の受賞作のうち、アカデミー賞も受賞した作品はどれだけあるのでしょうか。

  • 2001年『シュレック』
  • 2002年『千と千尋の神隠し』
  • 2004年『Mr.インクレディブル』
  • 2005年『ウォレスとグルミット 野菜畑で大ピンチ!』
  • 2006年『ハッピー フィート』
  • 2007年『レミーのおいしいレストラン』
  • 2010年『トイ・ストーリー3』
  • 2011年『ランゴ』

2001年から2015年までの15年間で8作品。LAFCA受賞作のうち半数以上がアカデミー賞も受賞していることになります。

しかし、2012年以降の4年間、両賞を受賞した作品はありません。

直近4年間のLAFCA受賞作は、2013年が『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』、2014年が高畑勲『かぐや姫の物語』、2015年がストップモーションアニメ『アノマリサ』、2016年が『君の名は。』、2016年の次点が『レッドタートル』です。

これらのラインナップからも分かるように、近年、LAFCAはアカデミー賞よりも比較的アート寄りの作品が評価される傾向にあります。『君の名は。』に関しても、海外ではストーリー展開や軽快な音楽以上に新海作品特有の映像美が評価されている印象を受けます。

このような近年の傾向からすると、『君の名は。』の今回の受賞が即、オスカー獲得につながるとは言えません。

ただ、ロサンゼルス映画批評家協会賞の受賞作品のうち、アカデミー賞にノミネートされなかったのは、レバノン内戦を描いたイスラエルのアニメーション映画『戦場でワルツを』のみです。それ以外の作品はすべてノミネートされています。※『戦場でワルツを』は、外国語映画賞にノミネートされました。

ロサンゼルス映画批評家協会賞とアカデミー賞の相関関係を考えると、受賞するかどうかは別として、『君の名は。』がアカデミー賞にノミネートされる可能性は十分あるものと思われます。

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アニー賞にノミネート

annie-awards-trophy出典:http://annieawards.org

『君の名は。』はアニメ界のアカデミー賞といわれる第44回アニー賞にノミネートされました。日本からは他に、『レッドタートル ある島の物語』、『百日紅~Miss HOKUSAI~』がノミネートされています。

アニー賞の作品賞を受賞した作品のうち、アカデミー賞も受賞したのは2011年の『ランゴ』、2013年の『アナと雪の女王』、2015年の『インサイド・ヘッド』など、2001年からの15年間で10作品。実に3分の2の確率でアニー賞の作品賞を受賞した作品はオスカーも手にしています。

しかし、『君の名は。』がノミネートされたのは、インディペンデント作品賞と監督賞の2部門。インディペンデント作品賞とは、アメリカにおける上映館数が1,000館に満たない作品を対象とした部門で、『ズートピア』や『ファインディング・ドリー』などがノミネートされている作品賞とは別の部門となります。

このインディペンデント作品部門は2015年に新設された賞で、同年ノミネートされていた米林宏昌監督の『思い出のマーニー』は、アカデミー賞にもノミネートされました(両賞とも受賞はならず)。

アニー賞の過去の結果から推測すると、ロサンゼルス映画批評家協会賞と同様、『君の名は。』がアカデミー賞にノミネートされる可能性は十分にあると言えるでしょう。ただ、インディペンデント作品賞が2015年新設の賞であることを考えると、仮に受賞した場合であってもオスカー獲得の有力候補に躍り出たとまでは言えないと思います。

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強力なライバルたち

『君の名は。』のアカデミー賞受賞を占う上で、ライバル作品の存在も重要なポイントとなります。今回はかなりの強豪ぞろいです。

ズートピア / モアナ / ドリー / kubo

まずはアメリカ勢。

日本をはじめ世界中で大ヒットしたディズニーの『ズートピア』、同じくディズニー制作で日本では未公開ながらその可愛らしい予告編が話題の『モアナと伝説の海』、アメリカで2016年のナンバー1ヒットとなったピクサー制作『ファインディング・ドリー』など、これら3作の評価は非常に高く興行的にも成功しています。※モアナはアメリカで2016年11月23日に公開。初登場1位で初週に5550万ドル(約62億6400万円)を稼いでいます(出典:ロイター)

▲興行収入が全世界で10億ドルを超える大ヒットを記録した『ズートピア』

▲南太平洋の美しい海が舞台の『モアナと伝説の海』

▲大ヒット作『ファインディング・ニモ』の続編『ファインディング・ドリー』アメリカでは2016年のナンバー1ヒット

過去に発表した長編アニメ映画全てがアカデミー賞にノミネートされているライカのストップモーションアニメ『Kubo and Two Strings』も各方面から絶賛されています。

▲中世の日本が舞台の『Kubo and Two Strings』。アニー賞ではズートピア(11部門)に次ぐ10部門にノミネート

他にもアニー賞の最終候補に残った『カンフーパンダ3』、日本でもヒットした『ペット』など、良作がそろっています。

ヨーロッパ勢

そして、アカデミー賞はヨーロッパからも毎年1作品ノミネートされる傾向があります。

近年ではイギリスの人気ストップモーション・アニメ「ひつじのショーン」の映画版である『映画 ひつじのショーン〜バック・トゥ・ザ・ホーム〜』(2015)、日本では2016年夏に公開されて話題になったアイルランドの『ソング・オブ・ザ・シー 海のうた』(2014)、人気絵本を映画化したフランスの『くまのアーネストおじさんとセレスティーヌ』(2013)など。

今回もサン=テグジュペリの名作「星の王子さま」を原作とした『リトルプリンス 星の王子さまと私』、アヌシーでグランプリを獲得しアニー賞でも最終候補に残った『My Life as a Zucchini』など、評価の高い作品が揃っています。

▲『My Life as a Zucchini』

▲『リトルプリンス 星の王子さまと私』

日本勢

仮にヨーロッパ枠のようなものがあるとした場合、アメリカから3作品、ヨーロッパから1作品で、残りは1枠。ここに『君の名は。』が滑り込めるかどうかです。

今回は日本から原恵一監督『百日紅 Miss HOKUSAI』、スタジオジブリ初の共同制作作品『レッドタートル ある島の物語』、ファイナルファンタジー15と共通の世界を描いたフルCG作品『Kingsglaive Final Fantasy XV』が審査対象作品に選ばれています。

この『Kingsglaive Final Fantasy XV』は批評家の評価が最悪なのでないとして、『君の名は。』が1枠を争うのは『百日紅』と『レッドタートル』です。両作品ともアニー賞のインディペンデント作品部門で最終候補に残り、『レッドタートル』はロサンゼルス映画批評家協会賞で『君の名は。』の次点でした。

『百日紅』は「江戸時代」、「葛飾北斎」といういかにも海外受けしそうな要素がありますし、台詞のない無声映画で美しいアニメーションと音楽で普遍的な物語を紡ぐ『レッドタートル』はアート性では他の候補作の中でも抜きんでているので、両作品とも『君の名は。』の強力なライバルとなるでしょう。

▲『百日紅 Miss HOKUSAI』

▲『レッドタートル ある島の物語』

『君の名は。』の強みがあるとしたら、エンターテインメント性とアート性の両方を評価される可能性があるというところでしょうか。精緻に描かれた映像の美しさには海外の批評家、観客からも驚きの声があがっています。

過去に日本の作品が2作品ノミネートしたことはありません。ノミネートされる可能性があるとしたら『君の名は。』、『百日紅』、『レッドタートル』のうちどれか1作品のみだと予想できます。ただ、『レッドタートル』はメインで制作を担ったのはヨーロッパの制作会社ですし、監督もオランダ出身のマイケル・デュドク・ドゥ・ヴィットです。『レッドタートル』をヨーロッパ枠に入れるとしたら、上記3作品のうち2作品がノミネートされる可能性も(かなり低いですが)なくはないでしょう。

ノミネート&受賞作の予想

以上の点を踏まえてアカデミー賞の最終候補5作品と受賞作を予想してみたいと思います。※当初の予想からKubo and Two Stringsとモアナを入れ替えました(2016/12/12)。

最終候補5作品の予想は、、

  • ズートピア
  • ファインディング・ドリー
  • My Life as a Zucchini
  • Kubo and Two Strings
  • 君の名は。

ズートピア、モアナ、ドリーの3作は批評家らの評価も高く、興業的にも大ヒットしているのでどれも外しがたいと思ったのですが、バランスを考えるとディズニー2作品ノミネートというのは微妙かなと思い、モアナを予想から外しました。

『My Life as a Zucchini』はアヌシーでグランプリを獲得し、批評家からも圧倒的に高い評価を受けていることから最終まで残ると予想。※Rotten Tomatoesでは批評家支持率100%(2016/12/12現在)

『Kubo and Two Strings』を制作したライカは2009年に『コララインとボタンの魔女』、2012年に『パラノーマン ブライス・ホローの謎』、2014年に『The Boxtrolls』(日本未公開)と、これまでに送り出した長編アニメ映画3作すべてがアカデミー賞にノミネートされています。今回の『Kubo and Two Strings』はそれらの中でも最高傑作と言われており、ノミネートされる可能性は高いものと思われます。

▼Kubo and Two Stringsの制作過程。膨大な労力を要して制作されたことが分かります。

日本勢がノミネートされるかもしれない残り1枠に『君の名は。』を予想しました(共同制作とはいえスタジオジブリ作品であること、アートアニメーションとしての質の高さから『レッドタートル』のノミネートもあるかなとは思いますが、『君の名は。』の方がよりアカデミー向きかと)。

『君の名は。』は巫女や組紐といった海外受けしそうな日本的要素、作品のキーとなる3.11を連想させる出来事、新海作品独特の圧倒的な映像美、エンターテインメント性など、高く評価されそうなポイントが多くあります。北米での公開は2017年ですが、日本国内における社会現象と呼べるほどの記録的大ヒットのニュースも届いているでしょう。そしてなにより一番大きいのは、過去の受賞作がほぼ例外なくアカデミー賞の最終候補に選ばれている、ロサンゼルス映画批評家協会賞を受賞したことです。この事実は無視できないと思います。

過去に日本からは『千と千尋の神隠し』(2002)、『ハウルの動く城』(2005)、『風立ちぬ』(2013)、『かぐや姫の物語』(2014)、『思い出のマーニー』(2015)が最終候補にノミネートされています。※受賞は『千と千尋の神隠し』のみ。

もし『君の名は。』がノミネートされればジブリ作品以外では初の快挙となります。

では、今回のアカデミー長編アニメ映画賞を受賞するのはどの作品になるでしょうか。

これだけ『君の名は。』のことを書いておきながら恐縮ですが、私の予想は『ズートピア』一択です。大統領選挙におけるトランプ勝利以降、国内の分断が表面化しつつあるアメリカにおいて、社会の多様性や差別の問題を描いた『ズートピア』は完全に時代状況にマッチしています。

私の予想をまとめると、『君の名は。』はアカデミー賞の最終候補にノミネートされるが、受賞するのは『ズートピア』となります。

みなさんはどう予想されるでしょうか。

いずれにせよ、どのような結果になるのか楽しみです。

以上、かつかつ主夫@katsu2_shufuでした。

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― 関連記事 ―

▼『君の名は。』のヒットの理由を探ってみました。

▼スタジオジブリの最新作『レッドタートル』の感想

▼原恵一監督『百日紅』の感想

▼傑作アニメーション『この世界の片隅に』の感想と制作背景について

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