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【映画】セッションあらすじと感想~映像が奏でる音楽~

      2016/02/25

session

映画『セッション』公式サイト

デミアン・チャゼル監督の映画『セッション(原題:Whiplash)』を立川シネマシティで観てきました。ジャズを扱った映画ということで、シネマシティ自慢の極上爆音上映でした。映画を観たというよりは体験したという表現の方が適切ではないかと思うほどの衝撃を受けました。

作品情報:キャストやあらすじ

アカデミー賞の作品賞にもノミネートされ、全世界で高い評価を得ている本作。さんまのまんまに出演した斎藤工さんが大絶賛したり、映画評論家の町山智浩さんとジャズ・ミュージシャンの菊地成孔さんの間で論争が起きたことでも話題になりました。まあそういった事前に入って来る情報とは関係なく前々から観ようと思っていた映画だったので、会員になっている立川シネマシティに行ってまいりました。

先に感想を言ってしまいましょうか。

とても素晴らしい映画でした!

ではさらっと作品情報を↓

監督、キャスト

監督は1985年生まれで撮影当時28歳だったデミアン・チャゼル。高校時代からジャズドラムに打ち込み、厳しい音楽教師にしごかれたそうです。その時の体験を元に製作したのが本作とのこと。ミュージシャンを目指した彼自身の夢は破れ、ハーバード大学卒業後に映画の世界でキャリアを積むことになりました。『セッション』が初監督作品となります。

主人公のアンドリュー・ネイマン役はマイルズ・テラー。『ダイバージェント(Divergent)』などに出演した1987年生まれの俳優です。 ドS暴力音楽教師のテレンス・フレッチャー役はJ・K・シモンズ。今作で強烈な印象を残し、アカデミー賞助演男優賞を受賞しました。



テキトーなあらすじ(多少のネタバレを含みます)

ジャズドラマーを目指す主人公のアンドリュー・ネイマンはアメリカ最高の音楽学校であるシャッファー音楽学校に入学する。そこで出会ったのがJ・K・シモンズ演じるドS暴力音楽教師のテレンス・フレッチャー。常軌を逸した指導にも持ち前のど根性でなんとか食らいつくアンドリュー。しかし重要なコンペティションの場でまさかの遅刻(バスが故障)。それでも絶対に諦めない男アンドリューはレンタカーを借りて大急ぎで会場に向かう。が、急ぎ過ぎてトラックと衝突(こう書いているとちょっとアホですねアンドリュー)。車を降りて会場まで走り血だらけになりながらも舞台に立とうとする彼でしたがフレッチャーはそれを許さない。アンドリューはフレッチャーに殴り掛かり、その結果退学処分に。

ドラマーの夢を諦めてバイト生活を送っていたアンドリューはある日、過去の暴力的指導等が問題となり退校処分になったフレッチャーと再会する。すると今度行われる音楽祭でドラムを叩いてくれないかと依頼される。ドラムへの情熱を取り戻したアンドリューは依頼を承諾。そして音楽祭当日を迎え・・・

感想:全編とてつもない緊張感に満ちた傑作。町山菊池論争についても

ドラマーを目指す青年と暴力音楽教師の狂気のセッション

本作は息を呑む緊張感が映画全編を通じて持続し、圧倒的なクライマックスへと続きます。これはドS暴力音楽教師フレッチャーを演じるJ・K・シモンズの存在に依るところも多いですが、緊張感を持続させる監督の手腕も素晴らしいです。

コンペティションに遅れそうになったアンドリューがレンタカーを借りて会場へと向かうまでの流れは、あと何分で到着しないと間に合わないというタイムリミットが設定されていることもあり見ている側の緊張が一旦ピークに達します(中盤の山)。「あぁぁぁぁ、急げ急げ!」と拳を握りしめながら応援していると突然轟音と共にカメラが吹っ飛ばされ、車体は傾き、「ああ、終わった」と思いきや血だらけのアンドリューがふらふらと外に出てきて走り出す。勢いとテンポが抜群。しかも観客の心理がそこに付いて来られるようにしっかり計算されています(これを撮影当時28歳の監督がやってのけたというのは驚くべきことです)。

トラックに衝突する瞬間の映像は助手席から撮っているような視点になっているので自分が事故にあったかのような感覚も覚えます。今回は極上爆音上映だったからか振動も凄かったです。

そして主人公アンドリューもフレッチャーに負けず劣らずイカれています。クライマックス直前で彼はフレッチャーにどん底の底の底にまで叩き落とされるんですが、並みの人間なら絶望し敗北宣言するところを彼はやり返すんですよ。ドS暴力音楽教師に対して。その爽快感といったら半端ないです。しかもそれまでの彼の描かれ方からすると、この超人的なメンタル・タフネスの爆発を目の当たりにしても全く違和感がない。説得力があるんです。ラストは狂気に憑りつかれた二人のセッションによって観客は歪だが感動的ですらあるカタルシスへと導かれます。

映像が奏でる音楽

この映画をボロクソにこき下ろしたジャズ・ミュージシャン菊地成孔さんですが、いくつかある批判のポイントの中で「演奏が下手くそ」というのがあったと思います。確かにそうなんでしょう。プロのジャズ・ミュージシャンが言うのですから。僕自身は映画の中で流れる音の質を云々できるほどジャズ・リテラシーのようなものを持ち合わせていないので彼の言うことに反論できません。しかし、この映画自体が持っているリズム、テンポ、ビートは間違いなく素晴らしいものです。

映画の最初から最後まで続く緊張感の密度は非常に高いレベルで保たれ、それがラストに向かって加速度的に高まっていきます。これを可能にしているのはひとえに役者の演技力、演出力、カメラワーク、編集の上手さであり、映像の力です。そして観客の緊張感を映画のテンポに合わせてラストの圧倒的なカタルシスへと導いていく。そのためにはアンドリューのドラムは速く叩かれなければいけないでしょう。観客の心理操作のために無茶苦茶速く叩くという方法が必然的に要求されるのです。

演奏のレベルがプロの方たちも満足できるものであったら本作はさらに素晴らしい評価を得たのでしょうが、28歳の監督が低予算で作った映画にそこまで完璧なものを要求するのは酷ではないでしょうか。ジャズ・ドラマーを目指していた監督自身、作品内の演奏のレベルや見せ方などについての妥協点は多々あったと推測されます。しかし製作費を回収するための商業映画として成立させる上でそのような妥協というものは止むを得ないだろうし、そこは非常に上手くやってのけていると思います。あくまでもこれは映画なんです。ジャズのビートを映像に翻訳した作品として捉えれば、プロから見た場合の演奏の稚拙さを補って余りある力を持っていると思います。

とにかく素晴らしい作品なので観ていない方は是非。ブルーレイやDVDで観たとしても、ヘッドフォンなど使えば映画館とはまた違った迫力を体験できると思いますよ。

追記:セッションがWOWOWで放送されました。

セッションがWOWOWで放送されました。

WOWOW_新規申込

映画工房では、斎藤工さん、板谷由夏さんのお二人も絶賛していましたね。WOWOWでは再放送もあるので、見逃した方は是非。

 - レビュー, 映画

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