元川崎病患者のかつかつ主夫(30代)です。
私は3歳の頃に川崎病にかかりました。40日間の入院治療の末、後遺症もなく現在まで健康に過ごしています。
普段はそれほど川崎病について意識することはないのですが、先日「川崎病患者が急増している」というニュースを目にし、自分が幼い頃にかかったこの病気について詳しく知らないということに気づき、今さらながらしっかりと勉強してみることにしました。
以下、ここ数年患者数が急増している川崎病とはどのような病気なのか、その概要について元患者としての自分の経験を交えながら紹介したいと思います。
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目次
川崎病とは?病気の概要
川崎富作医師によって発見
(川崎富作 出典:日本川崎病研究センター)
川崎病は1961年、当時日本赤十字社の小児科医だった川崎富作医師が発見し、1967年に「指趾の特異的落屑を伴う小児の急性熱性皮膚粘膜琳巴腺症候群」(長い!)として報告・発表された病気です。
発見者の川崎富作にちなんで「川崎病」(Kawasaki Disease)という病名となりました。
川崎富作医師は90歳を超えた現在でも、川崎病の子どもを持つ親の相談を受けるなど、この病気に関する活動に積極的に取り組んでいらっしゃいます。
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意外と知られていない川崎病|川崎市とは無関係
川崎病は毎年1万人以上がかかる病気であるにもかかわらず、それほど広く知られてはいません。
2016年11月に放送されたNHK Eテレの「ハートネットTV 急増する川崎病 ―病と戦う子どもたち―」の中で「川崎病を知っていますか?」と街角でインタビューする場面があったのですが、多くの人が「名前は知っているけど具体的にどのような病気かは分からない」と答えていました。
川崎病のことを神奈川県川崎市に由来する公害病だと勘違いしている人も多いようですね。
川崎病は川崎市とは全く関係ありません。
工業地帯である川崎が、過去に公害問題を抱え、訴訟などにも発展した経緯があることから、このような勘違いが多く見受けられるのだと思われます。
主に0歳から4歳までの子どもがかかる
川崎病は、0歳から4歳の子ども、特に1歳前後の乳幼児が多くかかる病気です(4歳以上でかかる子どももいます)。
私は3歳の頃(4歳になる直前でしたので、おそらく3歳11か月頃)、川崎病にかかりました。
男子にやや多い。兄弟でかかる場合も
川崎病の患者は、男子が女子の約1.5倍と、やや男児に多い病気です。
川崎病にかかった子のうち、2~3%に再発がみられます。
うつる病気ではありませんが、1~2%の割合で、兄弟でかかる場合があります。
▼兄弟・姉妹間の感染などについては別で記事を書いています。
日本人をはじめ、アジア系に多い病気
川崎病は世界各地で報告されていますが、欧米諸国に比べて東アジア地域に患者が多いと言われています。
とくに日本人や日系アメリカ人、韓国人など東アジア系の人々に患者が多いことから、遺伝的要素が関係しているのではないかと考えられています。
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原因はいまだに不明
川崎病は発見から50年以上が経過しているにもかかわらず、いまだにその原因が分かっていません。
ウイルスや細菌などへの感染を引き金として免疫反応がおこり、全身の血管に炎症が生じるのではないかと言われていますが、そのウイルス、細菌が何なのかは特定できていません。
また、体質、つまりその子どもの持つ遺伝子によって川崎病にかかりやすいかどうか、重症化しやすいかどうかが決まると考えられており、川崎病の発症に関係する遺伝子の研究が今も進められています。
原因不明と言われ、まだ分からないことも多い病気なので、川崎病の子どもを持つ親の心理的負担は大きいものと思います。
私も娘が生まれてから、当時の自分の親の気持ちをリアルに想像できるようになりました。
本人はもちろん、親にとっても大変な病気だと今さらながら実感しています。
大流行?過去最高の患者数を記録
出典:(NHK Eテレ「ハートネットTV 急増する川崎病 ―病と戦う子どもたち―」より)
これまで、川崎病の患者が最も多かったのは、1982年の15,519人。1986年にも13,000人の大流行がありました。※私が罹患したのも1986年です。
その後、80年代後半には5000人台に減少したものの2005年から1万人を突破し、2013年には1982年を超える過去最高の15,696人、2014年にはさらに15,979人と約16,000人まで患者が増えてきています。
▼2011年から2014年までの患者数の推移は以下の通りです。毎年、男の子が女の子よりも多く罹患していることが分かります。
- 2011年 ⇒ 12,774人(男7,406人 女5,368人)
- 2012年 ⇒ 13,917人(男8,036人 女5,881人)
- 2013年 ⇒ 15,696人(男9,044人 女6,652人)
- 2014年 ⇒ 15,979人(男9,097人 女6,882人)
患者数増加の理由は、適切な診断をできる小児科医が増えたからという見方もあるようです。
川崎病を専門とし、川崎病の研究も行っている東邦大学医学部教授の佐地勉医師は次のように語っています。
患者数が増えた主な理由は、川崎病の認知度が広がり、小児科医という専門医が直接川崎病をみる機会が増えたからであると私は考えます。
川崎病の原因とは? 川崎病はうつる病気ではない – Medical Note
近年、どのような理由で川崎病の患者が増えてきているのかは分かりませんが、いずれにせよ、小さな子どもを持つ親としては心配になりますよね。適切な診断ができる医師が増えてきていることが原因なら心強い限りではありますが。
川崎病の症状/治療法/予後
症状は?
川崎病には主に6つの主要症状があります。
- 5日以上の発熱
- 眼球結膜充血
- いちご舌
- 発疹
- 首のリンパ節の腫れ
- 手掌、足底の紅班、回復期の指先の皮膚の膜様落屑(皮膚がめくれる)
症状は通常1~2週間でおさまり、発症後2~3週頃に後遺症として冠動脈瘤が約10%にみられます。
上に挙げた6つの主要症状のうち、5つ以上を伴う場合、川崎病と診断されます。症状が上記のうち4つの場合でも、冠動脈瘤があり他の疾患が除外されれば川崎病と診断されます。
川崎病による死亡率は、近年では約0.05%、2,000人に1人の割合となっています。
治療法は?
川崎病は原因不明のため、現在のところ根本的な治療法はありません。症状を軽減したり、冠動脈瘤ができないようにするための治療が行われています。
ガンマグロブリン療法(免疫グロブリン大量療法)
メインとなる治療法は、ガンマグロブリン療法(免疫グロブリン大量療法)です。
免疫グロブリン製剤を点滴により静脈内に投与することで、全身の炎症を抑え、冠動脈瘤の形成を防ぎます。
免疫グロブリンは血液製剤の1つで、献血された人の血液からガンマグロブリンというたんぱくを取り出したものです。
ガンマグロブリン療法は、1982年から始まった療法で、これが行われるようになってから急性期の冠動脈拡大やその後の冠動脈障害が大きく減少しました。
1986年に川崎病の治療を受けた私もこの治療を受けており、入院中は点滴をしていたことをよく覚えています。
問題となるのは、免疫グロブリン製剤を投与しても効果がない子どもがいることです。後遺症として現在、そういった子どもたちに対する新しい治療法を確立するための研究が国の機関や大学病院、こども病院などで行われています。
参照 ⇒ 川崎病の合併症に関する最新研究-後遺症ゼロを目指して – Medical Note
アスピリン療法
アスピリン療法も1977年ごろから川崎病の治療として行われています。
血液を固まりにくくする薬「アスピリン」を使用し、血管の炎症を抑えて血栓の形成を防ぐことを目的とした治療法です。
軽症の場合はアスピリン療法のみで症状が回復することがありますが、ほとんどの場合は前述のガンマグロブリン療法(免疫グロブリン大量療法)と併用して行われます。
参照 ⇒ 川崎病の治療法と入院期間、退院後の継続治療について – Medical Note
後遺症について
川崎病の急性期の炎症によって冠動脈が障害を受け、直径8mm以上の巨大瘤(きょだいりゅう)が形成されると、後遺症として冠動脈に瘤(こぶ)が残ってしまうことがあります。直径4mmから8mm未満の冠動脈瘤ができた場合でも、後遺症として残るケースがあります(後遺症が残る患者の割合は約3%)。
後遺症が残ってしまうと、通院と薬の内服が必要となります。幼いころにかかった病気と長年向き合い続けなければならないわけですから、大変な病気だということが分かります。
また、状態によっては運動を制限される場合があります。
後遺症が残らなかった場合は、運動なども特に問題なく行えます。
ちなみに私の場合は冠動脈に障害が残らず、運動制限などはしませんでした。小学校では6年間リレーの選手に選ばれ、中学・高校・大学ではバスケ部に所属。中学時代には校内のマラソン大会で優勝もしました。今思うと、かなり運動しまくりの学生時代でしたね。親は心配していましたが。
※退院後も中学生になるまでの10年間、毎年1回病院での検査を続け、問題なしと診断されています。
成人後も生活習慣病に注意
川崎病は新しい病気なので、罹患した子どもが将来、動脈硬化の年齢に達したときにどのような影響が出るのか分かっていません。
後遺症が残った場合はもちろん、後遺症が残らなかった場合でも、成人後に生活習慣病の予防に努め、健康的な生活を送ることが推奨されています。
川崎病が大流行した1980年代に罹患した患者(私もそうです)は現在30代。実際にどのような影響があるかが分かってくるにはもう少し時間がかかりそうです。
どのような影響があるか分からないと言われると不安になりますが、元川崎病患者であることが生活習慣病予防の取り組みの動機づけになるならそれもまた良いことだろうとポジティブに捉えようと私は思っています。
今後も、川崎病についてはいろいろと勉強していくつもりです。
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