主夫歴5年のかつかつ主夫です。
私が会社を辞めて主夫になったのは30歳の頃。妻の妊娠がきっかけでした。「このまま会社で働き続けていたら子育てなんてまともにできない」と思い、一念発起して主夫に。現在は在宅で仕事をしていますが、会社を辞めてから一年ほどは専業主夫でした。
今回は、そんな現役主夫である私が専業主夫になりたいと思っている方に向けて、退職前に知っておくべきリスクとその対策について書いてみたいと思います。
※ここでいう主夫とは、家庭における家事・育児などを主に担当している夫のことを指します。
▼私が主夫になった経緯について。
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目次
若い男性の約3割が「専業主夫」になりたい?
専業主夫になりたいと考えている人はどれだけいるのでしょうか。
日本における主夫は約11万人と言われています。この数字は年金の第3号被保険者の数。つまり妻の扶養に入っている男性の人数です(専業だけでなく兼業主夫も含む数字だと思われます)。
専業主婦の人数が約680万人であることを考えると、専業(兼業)主夫はまだまだ希少な存在と言えるでしょう。しかし、若い男性の中には、専業主夫になりたいと考える人たちが相当数いるようです。
若い人にアンケートを取ると、2~3割は専業主夫になりたい、あるいは女性が養ってくれるならそれでもいいとの答えがある。
私も実感としてこの数字にはリアリティがあると思います。「男は仕事」、「女は家庭」という性別役割分担の意識が根強い日本社会において、若い男性の中には「一家の大黒柱」として家計を支えることに重荷を感じている人が多くいます。
同時に、親・保護者としてしっかりと育児に携わりたいと考える男性も増えてきているように感じます。
上で引用した記事でインタビューに答えている白河桃子氏(相模女子大学客員教授)は、主夫という選択は新しい夫婦の戦略であるとも語っています。
もともと女性が専業主婦として家庭に入るという選択肢だけがあるのがおかしい。家事、育児を男性にしっかりやってもらいたいなら、男性が家庭に入る、専業主夫になるという選択肢があってしかるべきだ。そうなってこそ、互いに背負っている過重な荷を下ろせる。
お互いの収入や仕事内容等を考えれば、女性がバリバリ仕事をし、男性が家事育児をメインで担った方が効率的であるケースは多くあるでしょう。
性別役割分担にとらわれ、男は仕事、女は家庭という型にはめ込んでしまうことは非合理的です。専業主夫というのは、サバイバルな毎日を送る夫婦にとって十分検討に値する選択肢だと思います。
ただ、専業主夫になる上でのリスクも考えておく必要があります。残念ながら、現在の法制度、公的支援の内容、雇用環境等を考えると、専業主婦と同様に専業主夫にも様々なリスクがつきまとうのです。
では、そのリスクとは一体どんなものがあるのでしょうか。
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専業主夫のリスクとは
リスク1:再就職が難しいかもしれない
専業主夫になるための条件は、妻・パートナーの仕事、収入ですね(かなりの貯金や不労所得があるなら話は別ですが)。また、パートナーの理解も重要でしょう。
これら二つの条件が揃っていると仮定して、それでも勢いでいきなり仕事をやめてしまって専業主夫になるというのはリスクが高いです。
現状の社会システムの中では(正社員での)再就職が困難だと予想されるからです。転職活動の際に「離職期間が長いと選考で不利になる」と聞いたことがある方は多いのではないでしょうか。
私は退職前に現在の会社よりも休みを取りやすいところへの転職を検討していた時期があり、某大手人材サービス会社の転職エージェントと面談をしました。
その際、できれば会社を辞めてから転職活動をするのではなく会社に勤めている間に活動するように勧められました。
なぜかと聞けば会社を辞めてから次の会社が決まるまでの無職の期間(離職期間)が長いと選考で不利になるとのこと。なんだそれ?って感じですが、それが日本社会の現実なんですね。また、やむをえず離職期間ができてしまった場合は、面接のときに必ず突っ込まれるので、事前に説明できるように対策しておかねばならないとも言われました。
今の社会では、一旦専業主夫になってから3年後、5年後に再就職しようと考えても厳しい現実に直面するかもしれません。
出産を機に退職した女性が再就職するのも大変な世の中です。専業主夫という文化がほとんど定着していない日本では、一度会社を辞めた男性の社会復帰は厳しくなることが予想されます。多様な生き方、働き方を認める先進的で寛容な企業であれば、元専業主夫でも平等に選考してくれるかもしれませんが、数は限られるでしょう。
※専業主夫を経験して再就職した人の事例がまだまだ少ないので再就職がどれだけ困難であるかに付いては未知数ですが。
人によっては、「今の時代、元専業主夫(主婦)を雇ってくれる会社なんていくらでもある。フリーランスで働く選択肢だってあるんだから会社をやめることを怖がる必要はない」と言う人もいますが、私の場合はそこまで楽観的な認識は持てなかったです。少しずつ時代は変わってきているのかもしれませんが。。
ということで、この再就職の壁が専業主夫になることの一つ目のリスクだと私は思います。
※もちろん、止むに止まれぬ事情があれば話は別です。仕事で心を病んでしまったり、精神的に追い込まれてしまっていたり・・・そうした場合はとりあえずすぐに仕事をやめるべきだと思います。後のことは辞めてから考えればいいわけですから。
リスク2:離婚
上にも書きましたが、専業主夫になるための条件は妻・パートナーの収入です。これがあってこそ、我々主夫は家事育児に励むことができるのです。では、妻の収入がなくなったらどうするか。専業主夫を検討するなら頭に入れておくべきリスクがあります。そう、離婚です。
離婚の原因がパートナーの浮気などで、相手に支払えるだけの経済的余裕があれば、慰謝料等請求できるかもしれませんが、そうでなければ経済的に厳しい状況に追い込まれる可能性があります。
先ほども書いたように、主夫の再就職は困難になることが予想されるからです(賃金にこだわらず仕事を選ばなければなにかしら仕事はあるかもしれませんが)。
逆に主夫が浮気して離婚になった場合、ほとんどのケースで慰謝料は発生しないでしょう。
ところで、先に主夫になるための条件として妻・パートナーの理解というものを挙げましたが、離婚のリスクを軽減するためにもこれは重要です。
主夫として生活していて日々実感することですが、世間の目はなかなか厳しいものがあります。
男は働いて妻子を養うのが当然と考える人もたくさんいて、そういった人たちから心無い言葉を頂戴することもしょっちゅうです。
学生時代の友人、元同僚、親戚、妻の知り合い等々。皆が敵に見えて人と会いたくなくなるなんてこともありました。
▼主夫をしているとヒモと呼ばれることもあります。
こういった主夫に対する風当たりの強さを経験すると、夫婦ともに自分たちの選んだ生活スタイルに段々と自信が持てなくなり、気持ちが揺らいでしまうこともあります。心理的な不安から夫婦関係に歪みが生じる可能性もあるでしょう。
しかし、当初から夫婦で良く話し合い、夫が主夫になることをお互いがしっかりと納得していれば、周囲の雑音に振り回されることもありません。逆に夫婦の絆が強まることもあるでしょう。私は主夫になって本当に良かったと思っていますし、妻もそんな私の考えを尊重してくれています。
事前にじっくり話し合い、お互いが納得した上で主夫という道を選択することが、離婚リスクの軽減にもつながると思います。会社を辞めて主夫になろうと考えている方は、是非じっくりパートナーと話し合う時間を確保して下さい。
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リスク3:妻の死亡
これもあまり想像したくないことではありますが、妻・パートナーが死んでしまった場合も考えておかなければなりません。
稼ぎ頭のパートナーの収入がごっそり無くなってしまうわけですから専業主夫にとっては死活問題です。
まず、考えておくべきは遺族年金についてです。
以前は妻が死亡した場合、夫に遺族基礎年金は支給されませんでした。子または子のいる妻、つまり母子家庭が遺族基礎年金の支給対象であり、そこに父子家庭は含まれていなかったからです。
しかし、2014年4月1日の年金機能強化法の施行により、遺族基礎年金の支給対象が妻から配偶者に変更されました。これにより、現在では、妻に先立たれた父子家庭にも遺族基礎年金が支給されます。
平成26年3月31日までは、夫が死亡した場合の「子のある妻」のみが対象とされ、妻が死亡した場合の「子のある夫」は遺族基礎年金を受給できなかった(これは遺族基礎年金の制定趣旨が、働き盛りの男性が死亡したときに残された遺族(母子家庭)の生活を保障するためであったことによる)。平成26年4月1日より、「夫」「妻」の表記が「配偶者」に統一され、妻が死亡した場合の「子のある夫」にも支給範囲が拡大された。
参照:wikipedia
ただ、上記の遺族基礎年金の支給対象はあくまでも子のいる配偶者または子です。
子どもがいない場合は支給されませんので注意が必要です。
また、上記の遺族基礎年金とは別に遺族厚生年金というものもあります。こちらは依然として男女差が残っています。
遺族基礎年金での男女格差は改善されましたが、遺族厚生年金を男性が受け取るのには年齢制限が残っています。
年収八百五十万円未満の条件を満たしていても、妻が亡くなった時に五十五歳以上であることが条件で、受給は六十歳からです。ただし、遺族基礎年金を受けられる場合は五十五歳以上で受給できます。
妻の場合、遺族厚生年金の受給額や受給期間に違いはあるものの、年齢制限はありません。
一三年には、地方公務員災害補償法の遺族補償年金を受給するのに、男性のみの年齢要件は違憲との司法判断が示されました(大阪地裁)。労災の遺族年金に当たるものですが、遺族厚生年金についても見直しを求める声は強くなっています。参照:東京新聞
専業主夫に対する行政支援はまだまだ脆弱であることが分かります。
人間いつ死ぬか分かりませんから、専業主夫になりたいと考えている人は妻・パートナーが亡くなった場合のことも想定しておいた方が良いかもしれません(想像したくないことではありますが)。
また、こういった公的支援が受けられる場合であっても、その金額で本当に生活していけるのかも検討すべきです。足りない部分は、民間の保険に入っておくというのも選択肢の一つです。
専業主夫のリスク対策
対策1:家計を把握する
これまで紹介してきた通り、専業主夫になるにはリスクを背負う覚悟が必要です。これらリスクに対処するためにまずやっておかなければならないのが、家計の把握です。なんだそんなことかと思われるかもしれませんが、これはかなり大切だと実感しています。
会社を辞める前に家計の全体像をしっかりと把握しておくことによって、主夫になってからの生活の具体的なシミュレーションができます。
私は、会社を辞める前の3ヵ月ほど、Excelでかなり詳細な家計簿を作成して収入と支出の把握に時間をかけました。
家計簿をつけることによって、自分の収入がごっそり無くなったらどうなるかということが一目瞭然になります。もし、パートナー1人の収入でやっていけないようなら、パートで働くことも必要になってくるかもしれません。
最近はクラウドワークスやランサーズといった在宅で仕事ができるサービスもありますから、これらを利用して足りない収入を補うこともできます(低単価の仕事が多いのであまり積極的におすすめはできませんが)。
会社を辞めて通勤の必要がなくなれば、家賃の安いところに引越しするのも選択肢の一つです。
現在、自分とパートナーの職場の中間点に住んでいる方などは、より広範囲なエリアで住宅探しができるようになるでしょう。家計の見直しをする場合、とにかく固定費の削減はマストです。その中でも多くを占める住宅費を節約することは専業主夫となった場合のリスク軽減にもつながります。
対策2:個人のスキルを磨く
パートナーとの離婚や死別、病気など、一度家庭に入った専業主夫が再び仕事をしなければならない場合があります。このような万が一の状況に対応するために何ができるでしょうか。
まず考えられるのは資格の取得です。家事育児の合間に資格取得のための勉強をして、ある程度子どもが大きくなって時間ができたらその分野の仕事につくという人は少なくありません。
再就職の難しさを考えると有効な手段だと思います。専業主婦の中に資格取得や習い事に熱心な方が多いのは、このような理由もあるでしょう。隙間時間に勉強することによって、気持ちのリフレッシュにもなると思います。
ただ、世の中には資格商法というものもありますので注意が必要です。
資格を取得したところで全く仕事に繋がらないといったケースが多くあります。
リスク対策として、将来的に収入を得ることを第一に考えるならば、本当にその資格が仕事に繋がるのかということを入念に調べることが重要です。
もちろん、趣味として割り切って考えているならそういった勉強も良いと思います。やはり家事育児に追われる生活というのはかなりしんどいものですからね。精神的なリフレッシュが必要です。
資格以外にも、実力さえあれば離職期間に関係なく収入が得られる仕事もあります。
例えば、Webデザイナーやプログラマーなどは、他の職種に比べて実力主義の側面があると思います。
離職期間があっても、ポートフォリオなどで自分の実力をしっかりアピールできれば再就職も可能でしょうし、フリーランスで仕事を請け負うこともできるでしょう。
フリーランスで仕事をする場合には、手始めに、先ほども紹介したクラウドワークスやランサーズといったサイト経由で仕事をするという選択肢もあります。
ちなみに私は翻訳の仕事をしています。
企業への再就職が難しくなることを想定して、退社前から翻訳の仕事をすることを当面の目標にしていました。在宅でできますし、ある程度実力の世界なので主夫としての生活にマッチしていると思います。
会社員時代にもコツコツと英語の勉強をしていて、TOEICを受けたり、独学で翻訳の勉強をしたりしていました。
在職中に、その後の生活やリスクを想定し、その対策として勉強していたことは、「専業主夫になる」という、今から思えばなかなか勇気のいる決断の後押しにもなったのではないかと思います。
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まとめ:ライフスタイルを自由に選択できるのが理想
以上、専業主夫になりたい人に向けて、そのリスクと対策について書いてみました。
事前にどのようなリスクがあるのかを把握し対策を考えておけば、主夫になるという一歩を踏み出す勇気も出てくるでしょう。
もちろん私は、皆が皆主夫になるべきとは全然思っていませんが、明らかに夫が家事育児をメインに担った方が合理的と思われる家庭も存在するわけです。
そういった人たちがジェンダーロールに縛られたり、世間体を気にしたりして「妻が働き夫が主に家事育児を担う」という生活スタイルを選ばないのは色んな意味で損失だと思います。
皆が自由に自分たちの生活スタイルを選択できる社会になるべきだと思いますし、主夫という生き方も数ある選択肢の内の一つとしてもっと認知されていけばいいなと思っています。
冗長でまとまりのない文章になってしまいましたが、様々な理由から専業主夫になりたいと考えている方の参考になれば幸いです。