広告における女性の描かれ方にNO!を突きつける#WomenNotObjects(女性はモノではない)キャンペーンの動画を見ました。
動画は、Googleで「objectification of women(女性のモノ化)」と画像検索するところから始まります。大量に表示される、女性を性的な飾りとして配置する画像の数々。しかも商品とは全く関係ないものばかり。その中のいくつかをパネル化したものを手にした女性たちが、カメラに向かって語りかけます。例えば、男性の股の間に寝そべる水着姿の女性の写真。飲料メーカーの広告ですが、これを手にした女性は皮肉たっぷりにこう言います。
I love sacrificing my dignity for drink.(私は飲み物のために自分の尊厳を捧げるのが好き。)
写真の中の女性を語り手とすることで、性的な記号と化していた女性に人格が付与され、広告の歪さを浮かび上がらせています。
広告は時代や社会を映す鏡です。そこには人々の持つ潜在的欲望が顕著に表れています。#WomenNotObjectsキャンペーンは、女性をモノとして描く広告に対する告発であり、それはつまりこの社会が持つ潜在的欲望、女性の身体を“モノ”として見る視線に対する告発でもあります。
街中やPC、スマートフォンの画面上に溢れかえる様々な広告に登場する女性たちの多くは、人格が奪われ、(主に男性の)性的欲望を掻き立てる記号としてそこに存在しています。
このような広告に日々さらされながら生きる少女たちのことを想像してみて下さい。彼女たちは、女性の身体を消費し続ける社会の視線を内面化し、男たちを惹きつける「魅力的な女性」になろうとします。#WomenNotObjectsでは、#IStandUpというハッシュタグで、女性をモノとして描く広告によって引き起こされる精神的、身体的被害について告発する動画も公開しています。
この動画では、「サイギャップ(太ももの隙間)」を手に入れるため、太ももにラップを巻きつける少女や、整形手術を受ける少女、ファッションモデルのカイリー・ジェンナー(Kylie Jenner)のようなぷっくりとした唇を手に入れるため、ペットボトルを吸い込んで唇を腫れあがらせてしまう少女たちの姿が映し出されます。
日本ではあまり馴染みのないサイギャップ(Thigh gap)という言葉ですが、これは両脚を揃えたときにできる太ももと太ももの隙間のことを意味します。隙間ができるほどに細い足が魅力的とされ、アメリカの10代の少女たちがそのような脚を手に入れようと悪戦苦闘しているとのこと。マスコミが作り上げる「痩せた女性」という理想像がSNSで拡散され、強迫観念のようにして少女たちを拘束しているわけです。このようなサイギャップを追い求める少女たちを紹介しているAFPの記事で、アメリカの社会学者が次のように話しています。
社会学者シャノン・スナップ氏は、雑誌や映画、テレビなどのマスメディアが「痩せた理想像」をあおっていると批判し、それに乗らないよう消費者に呼び掛けている。「若い女性や少女たちは、そうしたメッセージを内面化して自分のものにしてしまっている。成功したり人に好かれたりしたければ、こういう外見にならないと、胸以外はどこもすっかり痩せないと、と。生まれて初めて大人の女性と比べられる思春期にいる10代の少女たちはおそらく、そういう外見にならなくてはというプレッシャーを最も感じやすいのではないでしょうか」
マスメディアが作り出す「女性の理想像」が少女たちのセルフイメージに影響を与えるというのは、日本においても見られる現象です。テレビや雑誌、日々の生活の中で、女性の外見をジャッジする男性の視線にさらされていることに段々と気づき始め、いつの間にかそこに順応し、性差別的な価値体系の中で自分の地位を高めようする。この価値体系の中で疎外された者はイジメの対象になったり、社会生活の様々な局面で傷つけられます。
#IStandUpの動画の中に、「女性をモノとして描くことは女性を心理的、身体的、精神的、社会的に傷つける」と語る女性が出てきますが、全くその通りだと思います。
娘を持つ親として、自分は何ができるのか、色々と考えさせられますが、#WomenNotObjectsキャンペーンのWebサイトの中に、そのヒントとなる言葉がありました。
To teach girls that their worth is not their weight, their looks or their body parts, but who they are, what they have to say and what they can do.
#WomenNotObjects – Our Mission
これは、#WomenNotObjectsキャンペーンがOur Missionとして掲げているものの内の一つです。直訳すると、「少女たちに、あなたたちの価値は体重や外見、身体のパーツではなく、どのような人間であるか、何を話し、何ができるかであると教えること。」となります。
外見、容姿ではなく、君自身に価値があると伝える。自分が娘にまずできることは、彼女の存在を無条件に肯定することだと思いました。