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交通費のジェンダーギャップ。女性は余分に負担している?

電車 女性

WIRED(英語版)に掲載された記事THE PINK TRANSIT TAX: WOMEN SPEND MORE THAN MEN TO GET AROUND NYCを読みました。

ニューヨークに住む女性は交通サービスに支払う金額が男性よりも多いというニューヨーク大学(以下、NYU)の研究を紹介する内容です。

NYUが行った研究のタイトルは、

The Pink Tax on Transportation

Pink Tax(ピンク税)とは、同種の商品でも女性向けの方が男性向けより高く販売されるジェンダー間の価格差別を指す言葉です。

NYUの研究によると、交通サービスに支払う金額にも同じ現象が起こっている可能性があるとのこと。

そして、こういった金額の差異の要因として安全性の問題が挙げられています。

NYCに住む女性の75%が公共交通機関で被害に

NYU Rudin Center for Transportationが行ったアンケート調査によると、公共交通機関でハラスメントや盗難の被害に遭ったことのある女性の割合は75%(男性は47%)。

被害の頻度についての質問に対しては「数えきれない」「これまでの人生で何度も繰り返し遭遇している」と女性たちは答えています。

地下鉄や電車におけるこのような被害を避けるため、夜遅い時間帯には一般的により高額であるとされるUber等の配車サービスを利用する女性が多いそうです。

安全上、防犯上の理由で交通サービスに支払われる支出の中央値は、女性の場合、月に26ドル〜50ドルで日本円にすると約2964円から5700円(※1ドル114円で計算)に上る一方、男性の中央値は0ドル。

自分の身を守るために女性は余計なコストを支払わされているという重い現実がこの数字から見て取れます。

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日本にも交通コストのジェンダーギャップは存在する?

ラッシュアワー 駅構内

この研究を行ったNYUの准教授Sarah Kaufmanは、WIREDの取材に対して「他の大都市でも同じような問題があるのでは?」という趣旨のコメントをしています。

今回の研究で調査対象となっているニューヨークの中心部は地下鉄の利用者が多い地域ですが、おそらくニューヨーク以上に公共交通機関の利用者が多いだろう東京・大阪などの日本の大都市圏でも似た問題が存在することが予想されます。

アメリカに比べて鉄道網が全国に張り巡らされている日本の環境を考慮すれば大都市圏のみならず、地方においても男女間における交通コストのジェンダーギャップはあるのではないでしょうか。

たとえば女性が深夜に帰宅する場合、防犯上の理由で最寄駅からタクシーを利用するケースは多いでしょう。

警視庁も女性に対して夜遅い時間帯にはタクシーを利用するよう促しています。

タクシー利用が女性の自衛策の一つとして推奨されているわけです。

当然、タクシーは「ただ」ではありません。最寄駅から徒歩で帰るという選択肢を女性よりも選びやすい環境があるのであれば、そこにはジェンダー間の交通コストの差異が存在するはずです。

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生活コスト + 防犯上のコスト + 男女間の賃金格差

前述したピンク税(Pink Tax)に加えて女性は日々の生活にかかるコストが男性以上であることが予想されます。

たとえば生理用品にかかる支出は生涯で200万円を超えるとも言われています。化粧品にかかる支出もかなりのものになるでしょう(日本の場合、女性が化粧をしないことがマナー違反と言われる謎文化もありますからね)。

こういった女性が男性以上に負担しているであろう生活上のコストにタクシー利用などの防犯上のコストが上乗せされます。

家賃が割り増しになる駅近のマンションやオートロックマンションなど、女性の住まい選びも安全・防犯のために余分にかかっているコストと考えてよいでしょう。

さらに問題なのは男女の賃金格差です。

男女間の賃金格差のランキングで日本はOECD加盟国の中で最下位から3番目の24.5%(2017年)。

アメリカは18.2%(2017年)で決して高いとは言えませんが、それでも日本よりはギャップが小さいという結果になっています。

参照:Gender wage gap | ORCD Data

女性であるというだけで男性よりも生活上のコストや防犯上のコストがかかる。にもかかわらず賃金は男性よりも低い。

レディースデーの割引を例に出して女性優遇・男性差別・女尊男卑だとする主張の荒唐無稽さを思わずにはいられません。

「より安全な選択肢」を選べない女性もいる

女性とタクシー

交通コストのジェンダー格差の背景に女性が日々直面している防犯の問題が隠れていることを指摘したNYUの研究ですが、アンケートに回答した女性が大卒以上の白人女性に偏っているという課題もあり、今後は有色人種や貧困層などより多様な背景を持つ人々を対象に含めた調査を継続的に行なっていくとしています。

今後の調査次第では、貧富の格差によって安全(または安心)を(ある程度)享受できる女性とできない女性に分断されている実態が浮き彫りにされる可能性もあります。

比較的裕福な女性はUber等の「より安全だと思われる」移動手段を選ぶことができても、金銭的にそういった選択をする余裕のない女性もいることが予想されるからです。

日本でも同じような状況があるものと思われます。先ほど例に挙げたように警視庁は夜遅い時間帯のタクシー利用を推奨していますが、金銭的な理由でそれが不可能な女性もいるでしょう。

住まいに関しても同じことが言えます。駅近オートロックマンションに皆が住めるわけではありません。

加害行為がなくならなければ根本的に解決できない

安全、安心を得るためにお金を出す余裕のある人。

金銭的な理由で防犯のためのコストを支払うことができず不安を感じながら生活せざるを得ない人。

金銭的に厳しいにもかかわらず、防犯上の理由で余分な出費を強いられている人。

安全を脅かされている女性たちの間にも様々な格差が存在することでしょう。

また、徒歩では不安だからとタクシーを利用したにもかかわらず、ハラスメントを受けたり性被害に遭う女性もいます。

安全・安心を「お金で買う」ことにも限界があります。

そもそもこういった問題は女性に対する加害行為があるからこそ出てくるものです。

女性に対する加害行為(そのほとんどが男性によるもの)さえなくなれば、女性が余分なコストを支払う必要もまたなくなります。

NYUのレポートにもあるように、公共交通機関等での安全を確保するために実践すべき具体的な対策を考えるのは重要なことですが、常に加害行為を糾弾し、加害側に「やめろ」と訴えかける姿勢も保持し続けなければならないと思います。

ましてや、ただでさえ余分なコスト(精神的・心理的なものも含め)を負わされている女性に対し、ことさらに自衛を求めるというのはあまりにも理不尽です。

※NYUのレポートでは、交通サービスにおける安全確保のための施策として下記のようなものが紹介されています。

  • 公共交通機関における監視ツール、報告ツールの技術的な改善
  • 交通インフラの設計・経営をリードする女性の増加
  • 被害を目撃した第三者が被害者を適切にサポートするためのトレーニング

参照:The Pink Tax on Transportation: Women’s Challenges in Mobility(pdf)

参照サイト

WIRED(英語版)

THE PINK TRANSIT TAX: WOMEN SPEND MORE THAN MEN TO GET AROUND NYC

NYUのレポート(summary)

The Pink Tax on Transportation: Women’s Challenges in Mobility

NYUのレポート(詳細pdf)

NYUのレポートでは、女性が子どもの主たる養育者である場合、交通サービスに支払う金額がさらに高くなるという問題についても言及しています。興味のある方は下記の詳細レポート(pdf)を参照してください。

The Pink Tax on Transportation: Women’s Challenges in Mobility(pdf)

ジェンダー間の賃金格差(OECD加盟国)

Gender wage gap | ORCD Data

Pink Tax(ピンク税)について

Pink Tax(ピンク税)について日本語で書かれた記事。

生理用品は一生分で200万円超! 「ピンク税」論争とは

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