バービー人形の販売元マテルが女の子と男の子の間にある「夢の差(Dream Gap)」を埋めるためのプロジェクトを始めることを発表しました。
ジェンダーステレオタイプが女の子たちの将来の可能性を狭めていることに対する問題提起で、玩具メーカーとして何ができるかを考えた上でのプロジェクトです。
以下、プロジェクトの内容をまとめたのでシェアしたいと思います。
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ジェンダーステレオタイプが女の子の可能性を狭める
今回マテルが発表した「The Dream Gap Project」は女の子が自分の能力に自信を持ち、将来に対して幅広い夢を描けるようエンパワメントするというものです。
バービーの販売元のマテル(Mattel)は公式サイト上で「子どもたちは幼い頃から女性は男性より賢くないという文化的ステレオタイプを持ち始める」という研究を紹介し、それらが女の子たちの将来の職業選択にも影響を及ぼすことを指摘しています。
自分の属する性別がもう一方のそれよりも知的に劣っていると感じることで、将来なりたいと思う職業について自ら制限をかけてしまう。特に知的な能力が必要と考えられている職業を目指すことを諦めてしまう。
女の子と男の子の間にまさに「夢の差(Dream Gap)」ができてしまっている。
子ども達が知らず知らずのうちに内面化してしまうこのようなジェンダー・ステレオタイプはメディアの影響や周囲の言葉がけ、大人たち自身が持っている偏見の「伝染」によって形作られるわけですが(私たち夫婦が娘の子育てをしていく中で気をつけていることでもあります)、マテルは以下のような具体例を挙げて我々大人の振る舞いに警鐘を鳴らします。
- 女の子が科学に関係する玩具を与えられる割合は男の子の3分の1
- 親がGoogleで「うちの息子天才?」と検索する回数は「うちの娘天才?」の2倍
- 女の子は成長するにつれて男の子に比べて自分の知的能力に対する自信を失う
マテルはこれらの内容をまとめた動画を公開しています。少女たちが世の中のジェンダー・ステレオタイプに疑問を投げかけ、この現状を変えるには皆さんの協力が必要だと呼びかける内容です。
動画の内容をまとめると以下の通りです。
現状の指摘
女の子は5歳になる頃から自分が将来「大統領」や「科学者」「宇宙飛行士」「社長」といった職業になれるという自信を失っていく。
背後にあるジェンダーステレオタイプ
女の子が自分自身の可能性を信じられなくなってしまう背景にはジェンダーステレオタイプがある。
ロールモデルの必要性
ジェンダーステレオタイプを破壊し自身の将来の可能性を制限しないためにはロールモデルとなりうる女性達について知る必要がある。
誰もが責任を持つべき問題
少女達は動画の最後に「この現状を変えるためには自分たちだけでは不可能です。みなさんの助けが必要です」と呼びかけます。
女の子と男の子の間の「夢の差」を埋められるかどうかは、この社会を構成する人々全員にかかっていると訴えるのです。
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バービーにできること
では、マテルはバービー人形を通してどのようにこの「夢の差」の問題に対処しようというのでしょうか。
大学との連携
マテルは「夢の差(Dream Gap)」の問題についてニューヨーク大学の研究者らと連携して研究を続けることを表明しています。
継続的な研究によってもたらされる成果を企業活動に繋げていく計画です。
ロールモデルとなるバービー人形の製作
動画で少女たちが語っていたように、女の子たちには様々なキャリアで活躍するロールモデルとなる女性が必要です。
自分たちと同じ性別の人々が活躍している現状を知り、その姿を思い描くことができれば「女の子は〇〇になれない」「女の子は〇〇に不向きだ」といったジェンダーステレオタイプを破壊できる。
マテルは少女達のロールモデルとしてオリンピックの金メダリストや映画監督、ジャーナリストなど、各分野で活躍する女性達のバービー人形を製作しています(販売されているのは一部のみと思われます)。
参照:Barbie CELEBRATES ROLE MODELS
女の子達を勇気付ける動画コンテンツ
マテルは女の子達が自分自身の可能性について自信を持てるよう励ましたり、勇気付けたりする内容の動画コンテンツを提供しています。
女の子達が様々な職業を体験する動画やバービーが女性アスリートにインタビューする動画などが揃っています。
様々な職業のバービー人形を販売
遊びを通して様々な職業に従事する自分の姿を想像できるようにバービーにはCAREER DOLLSというシリーズがあり、科学者や野球選手、画家、パイロット、ロボット工学者などのバービー人形が販売されています。
時代の変化とともに変わっていくバービー人形
バービー人形といえばその影響力の高さゆえ「痩せ型のモデル体型」が少女達の理想とされている現状に多くの批判が集まってきました。そういった批判に応える形で近年は「ぽっちゃり」「小柄」といった多様な体型の人形を販売しています。
現実離れした体型を理想とし、自分の身体に自信を持てない女の子たちに「体型なんて気にしなくて良いんだよ」「ありのままの自分を受け入れよう」というメッセージを届けるこういった姿勢は日本の玩具メーカーにはなかなか見られないことです。
もちろん、社会の意識の変化に合わせた販売戦略という側面はあるのでしょうが、時代の要請にしっかりと応えて変わっていく海外の事例を目にするたびに彼我の差を感じざるをえません。
今回紹介した「The Dream Gap Project」も女の子達をエンパワメントするメッセージに溢れていて、娘を持つ親としてもこういった企業の姿勢に強く賛同したいと思います。
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