かつかつ主夫ブログ

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宮崎駿の最新作「毛虫のボロ」の内容と制作背景。どこで観られる?

      2016/11/13

kemushi-no-boro-miyazaki-nhk▲毛虫のボロ制作中の宮崎駿(出典:NHK

かつかつ主夫@katsu2_shufuです。

宮崎駿の最新作『毛虫のボロ』の制作過程がNHKスペシャル「終わらない人 宮崎駿」で放送されました。ナレーションがメイちゃんだったり、ドワンゴの川上量生にキレたり(感動的な場面でもありました)、それよりなによりまさかの長編復帰(!)を示唆する発言が飛び出したり(鈴木敏夫に企画書まで見せていました!)と刺激的な内容でしたね。

再放送がありますので、見逃した方はぜひ見てください。

放送時間:2016年11月13日(日) 21:00~※終了しました。
再放送:2016年11月16日(水) 0:10~

『風立ちぬ』を最後に長編映画からの引退を宣言した宮崎駿ですが(NHKスペシャルを見る限り、引退撤回の可能性はあります)、作品制作への熱意は衰えておらず、現在は初めて本格的にCGを用いた短編映画の制作を行っています。

日本中、世界中が注目する宮崎駿監督の最新作『毛虫のボロ』の内容や制作背景、どこで観られるかなど、今現在分かっている範囲の情報をまとめました。

毛虫のボロはどこで観られる?公開はいつ?

『毛虫のボロ』は三鷹の森ジブリ美術館の映像展示室「土星座」で公開されます。この土星座で公開される短編アニメーション映画は他の劇場で公開されることはありません。また、DVD、ブルーレイでも販売されません。ジブリ美術館でのみ見ることが可能です。

長編映画の場合とは違ってジブリ美術館の短編アニメは「出来上がったら公開する」というスタンスなので、はっきりとした公開時期は分かりませんが、2017年もしくは2018年になるのではないかと言われています。ただ、いつものごとく様々な諸問題が発生し、製作期間はさらに伸びる可能性もあるようです。

今回のNHKスペシャルの担当ディレクター荒川格氏は次のように語っています。

制作期間も、初めは1年半〜2年と予想されていたのですが、諸問題が発生し、いまだ完成時期は未定です(笑)。まさに「終わらない人」ですね。
出典:宮﨑 駿に再び火がついた! 最新作のきっかけはゴミ拾い?

今回の『毛虫のボロ』は、ジブリ美術館の短編映画として第10作目になります。

▼ジブリ美術館のチケットの入手方法やアクセスについてはこちらを参照してください。

▼ジブリ美術館の短編映画の内容や感想についてはこちら。

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毛虫のボロの内容|1ミリの毛虫から見た世界を描く

kemushi-no-boro-panel出典:シネマトゥデイ-(c) Museo d’Arte Ghinli

毛虫のボロの内容は現在のところ、ジブリ美術館に展示されている手書きの企画書からしか推し量ることができません。
(※NHKスペシャル内で宮崎監督の絵コンテや毛虫のボロがタマゴから生まれる場面などを少しだけ見ることができます。見逃した方は再放送をチェックして下さい。)

ジブリ美術館の展示には、「うーんと小さな生き物から見た世界はどんなでしょう。主人公のボロは1ミリしかないのです!」と書かれています。

他にも、「朝のつぶもみえる!!」「空気のゼリーおいしいのだ」「葉っぱの細胞が見える!!」といった言葉があります。体調1ミリの毛虫の主人公ボロの視点で、葉っぱの葉脈までも大きく映る極小の世界が描かれることが予想されます。

ジブリ作品の中で小さな主人公の視点から描かれるものとしては、これまでに『借りぐらしのアリエッティ』(2010年)やジブリ美術館の短編映画『水グモもんもん』(2006年)などがあります。

若き日の宮崎駿が影響を受けた『バッタ君町に行く(原題:Mister Bug Goes to Town)』(1941年)も、小さな虫たちが画面いっぱいに動き回るような作品です。

▼三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー提供作品『バッタ君町に行く』
kemushi-no-boro-mr-bug-goes-to-town

ジブリ美術館の展示には、「怪獣えいがになっちゃいそう」とも書かれています。おそらく毛虫のボロ以外にもキャラクターが登場し、躍動的なアニメーションが見られるのではないでしょうか。

『毛虫のボロ』がどのような作品になるのか楽しみです。

▼宮崎駿が影響を受けた作品。「絵を動したい」というアニメーションの原初的欲望が完璧に表現されています。とても1941年の作品とは思えません。

毛虫のボロの制作背景

毛虫のボロの構想は「もののけ姫」以前から

宮崎駿が毛虫を主人公にした新しい短編アニメを制作中というニュースを知ったとき、私は、『もののけ姫』のときにもそのような作品を作るという話があったことを思い出しました。

『紅の豚』以降、長編アニメの監督から遠ざかっていた宮崎駿の新作は、どうやら毛虫を主人公にした作品になるらしいという話(たしかテレビか雑誌のインタビューでした)を聞き、「ああそうなんだ」と思っていたところ発表されたのが『もののけ姫』だったので、「あれ、あの毛虫の話はどこいっちゃったんだろう」と思ったことを覚えています。

▼1995年に宮崎駿が描いた『ボロ』のスケッチ。
kemushi-no-boro-sketch-1995

調べてみると、やはり『毛虫のボロ』は『もののけ姫』と同時期に劇場公開用長編アニメ映画として企画されていたそうです。しかし、ジブリのプロデューサー鈴木敏夫が、「人間が出てこない物語を長編として成立させるのは難しい」と判断し、“アクション映画”である『もののけ姫』の方をやることになりました(参考:鈴木敏夫プロデューサーに聞く“現在進行形”の宮崎駿監督とスタジオジブリ

20年以上前から構想があった『毛虫のボロ』。宮崎駿としては前々からやりたかった作品にようやく挑戦できるということで並々ならぬ熱意をもって(いつものことですが)作品づくりに取り組んでいることでしょう。

ちなみ、『もののけ姫』の頃から宮崎駿は「これが最後の作品になる」と言っていたことを覚えています。結局その後15年以上引退は先延ばしになったわけですが、度々口にする引退発言から、1作ごとに全てを出し切ろうと全力を尽くす姿勢をうかがい知ることができます。短編とはいえ、こうして彼のアニメをまだ見られるというのはありがたいことです。

※NHKスペシャルの放送では、長編への復帰を示唆しました。鈴木敏夫に企画書を出し、「鈴木さんはどんな手を使ってでもお金を集めてほしい」とまで言っています。もしかすると、宮崎駿監督の長編作品を見られる日が再び来るかもしれません!

▼「風立ちぬ」の制作から引退宣言までを追ったドキュメンタリー。ジブリの色彩設計として宮崎駿監督と長年仕事をし、先日他界された保田道世さんの姿も見ることができます。

CG制作には櫻木優平、スティーブンスティーブンが参加

『毛虫のボロ』は、宮崎駿が初めて本格的にCGを使ったアニメーション制作に挑戦するということでも話題になっています。

CG制作には、CGアニメーターの櫻木優平が参加。櫻木優平は2015年、アヌシー国際アニメーション映画祭のコンペティション部門に出品された岩井俊二監督の『花とアリス殺人事件』のCGディレクターを務めたことでも注目を集めました。

▼櫻木優平
kemushi-no-boro-sakuragi出典:cgworld.jp

また、博報堂グループの制作会社で、前述の『花とアリス殺人事件』や『ふうせんいぬティニー』などを手掛けているスティーブンスティーブンが制作に参加しています。

『毛虫のボロ』がCGを使った作品になると決まった段階で鈴木敏夫は宮崎駿に2つの選択肢を提案したそうです。一つは宮崎の親友でもあるジョン・ラセターのピクサーと一緒に作るというもの。もう一つは日本の若いCGスタッフに制作に参加してもらうという選択肢。宮崎は後者を選んだわけですが、やはり言葉の壁を考えてピクサーとの制作は断念したようです(参考:鈴木敏夫プロデューサーに聞く“現在進行形”の宮崎駿監督とスタジオジブリ

櫻木優平によると、手書きアニメーションを作り続けてきた宮崎と共に仕事をしていく中で、手書きとCGの感覚の違いのようなものを感じることもあるようです。ただ、「制作現場自体はすごく快適で、今までにないくらい健全な職場だと思います。」とも語っています(出典:cgworld.jp。NHKスペシャルを見る限りでは「ほんとかな?」と思ってしまいますが(笑)。

なぜ宮崎はCGアニメに挑戦するのか

『崖の上のポニョ』では徹底的に手書きのアニメーションにこだわった宮崎駿が今回、CGによるアニメーション制作という決断をした理由はなんだったのでしょうか。やはりここでもきっかけを作ったのは鈴木敏夫だったようです。鈴木は長編アニメから引退した宮崎に、「気分転換」にCGでの制作を提案してみたとのこと。心機一転新たな手法にチャレンジすることで、モチベーションも上がると考えたようです。

それに加えて、年齢からくる体力的な衰えを考えると、手書きのみでのアニメーション制作は難しいという理由もあったと思います。ジブリ美術館の短編映画『パン種とタマゴ姫』は約12分と短い作品ながら作画枚数は2万4千枚にも上り、その制作過程が紹介されたNHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』では、手書きアニメーションの制作がどれだけの労力を要するものなのかが紹介されました。

▼『パン種とタマゴ姫』の内容や感想については以下の記事を参照してください。

また、これは私の個人的な憶測ですが、息子である宮崎吾朗が『山賊の娘ローニャ』でCGによるアニメ制作に取り組んだことも影響しているような気がします。なにかと負けず嫌いで色々な人(手塚治虫、高畑勲等々)に対抗意識を燃やしてきた宮崎駿ですから、息子の作品を観て何か刺激を受けたところがあるのかもしれません。完全に私の推測ですが。

以上、宮崎駿監督の新作『毛虫のボロ』についてのまとめでした。

【追記】
宮崎駿監督の作品はこの『毛虫のボロ』が最後かと思いきや、NHKスペシャル内でまさかの長編復帰が示唆されてとても驚きました。
『かぐや姫の物語』の記者発表で「宮さんが引退を撤回しても驚かないでください」と語った高畑勲の言葉が今さらながらグッときます。近年はお互いの作品を批判し合うなどしていた二人ですが、やはり兄弟のような特別な関係なのだなと感じます。鈴木敏夫とともに宮崎駿を最も理解しているのは高畑勲なのかもしれません。そして、かつて宮崎が「俺はパクさんを批判するけど、誰かがパクさんの悪口を言っているのを聞いたら一番怒るのも俺だよ」といった内容の話をしていたことをふと思い出したりもしました。

今後も最新情報が入り次第、ページを更新して行く予定です。

[随時更新予定]

▼宮崎駿『風立ちぬ』、高畑勲『かぐや姫の物語』の2作品を同時進行で制作中だったスタジオジブリの1年に密着したドキュメンタリー映画。高畑、宮崎、鈴木の愛憎相半ばする様子が映し出されています。

― ジブリ・アニメ関連の記事 ―

▼傑作アニメーション映画『この世界の片隅に』の感想や制作背景について書いています。

▼ジブリ美術館のチケット入手方法とアクセスについてまとめました。

▼ジブリ美術館でしか観られない短編作品についてまとめています。

▼ジブリ美術館のカフェの混雑回避の方法について。

▼スタジオジブリの最新作『レッドタートル』についてはコチラ。

▼ジブリの大博覧会(六本木)に行ってきました。

▼伊豆テディベアミュージアムで猫バスに乗れます。

 - アニメ, ジブリ, 映画

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