宮崎駿「毛虫のボロ」の感想と内容紹介。どこで観られる? | かつかつ主夫ブログ

宮崎駿「毛虫のボロ」の感想と内容紹介。どこで観られる?

三鷹の森ジブリ美術館で『毛虫のボロ』を観てきました。

『風立ちぬ』公開後、長編映画製作からの引退を宣言した宮崎駿(その後引退を撤回)の事実上の監督復帰作となります。

本格的にCGを用いるなど、新たな手法に挑戦した作品でもある毛虫のボロ。作品の内容と感想、製作背景などの情報をまとめました。

毛虫のボロはどこで観られる?公開はいつ?

毛虫のボロが観られるのは三鷹の森ジブリ美術館

『毛虫のボロ』は三鷹の森ジブリ美術館の映像展示室「土星座」で公開されています。

土星座で公開される短編アニメーション映画は他の劇場で公開されることはありません。また、DVD、ブルーレイでも販売されません。ジブリ美術館でのみ見ることが可能です。

▼2018年3月14日、三鷹の森ジブリ美術館の映像展示室「土星座」にて『毛虫のボロ』の完成披露試写会が行われました。

2018年3月21日から公開中

長編映画の場合とは違ってジブリ美術館の短編アニメは「出来上がったら公開する」というスタンスなので、長らく公開時期は公表されていませんでしたが、2018年1月9日、ジブリ美術館が公式に『毛虫のボロ』の公開日を発表しました。

公開日は2018年3月21日(水/祝)に決定。

上映スケジュールはジブリ美術館の公式サイトで確認してください。

『毛虫のボロ』は、ジブリ美術館で公開される短編映画の第10作目になります。

▼ジブリ美術館のチケットの入手方法やアクセスについてはこちらを参照してください。

▼ジブリ美術館の短編映画の内容や感想についてはこちら。

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毛虫のボロの感想と内容紹介

あらすじ

ジブリ美術館のHPで毛虫のボロのあらすじが掲載されています。

草むらのなか、夜が明ける前に卵からかえった毛虫のボロ。

初めて見る朝陽はとてもまぶしくて、世界はおいしそうな空気にあふれていました。ボロは、ボロギクの根元に降り立ち、毛虫の先輩や外敵が行き来する世界へと踏み出します。
上映時間:14分20秒
原作・脚本・監督:宮崎駿
声・音:タモリ
撮影監督:奥井敦
美術監督:吉田昇
CG作画監督:中村幸憲

参照:ジブリ美術館HP

1ミリの毛虫から見た世界を描く

『毛虫のボロ』はボロギクで生まれた毛虫の子ども「ボロ」が未知の世界に踏み出す物語です。

卵からかえったばかりのボロがまず目にするのは水中を漂う魚の大群。冒頭から宮崎ワールド全開で、彼の新作をこうして目にできる喜びにワクワクさせられます。

人の目には見えない空気を立体的に表現した「空気のゼリー」や光を立体物として描いた「光の棒」など、ボロの目に映る新鮮で美しい世界が躍動的なアニメーションで表現され、ボロの好奇心と生きることの喜びがスクリーンから伝わってきます。

大人の毛虫(大ボロ)が大量の糞の雨を降らせる場面では笑いが起こりました。

小さな主人公から見た世界を描くという意味でジブリ美術館の短編映画『水グモもんもん』(2006年)、長編では『借りぐらしのアリエッティ』などと同系統の作品と言えるかもしれません。

若き日の宮崎駿が影響を受けた『バッタ君町に行く(原題:Mister Bug Goes to Town)』(1941年)も、小さな虫たちが画面いっぱいに動き回るような作品です。

▼三鷹の森ジブリ美術館ライブラリー提供作品『バッタ君町に行く』

ボロを襲うカリウドバチは無人攻撃機

この世に生を受け、最初の一歩を踏み出したばかりのボロが目にするのは、世界の美しさや新鮮さだけではありません。そこには厳しい現実も待ち構えています。

作品中盤、突如として襲いかかる巨大なカリウドバチ。毛虫たちの平穏な生活の営みは急転直下、死と隣り合わせの過酷なものへと変貌します。

どこかラピュタのロボット兵を連想させるカリウドバチのメカニックな体つきは、「無人攻撃機」を想定したとのこと。

感情を読み取ることのできない無慈悲な敵の襲来を受けた毛虫たちはなすすべがありません。

本作の中で最も緊張感に溢れる場面で、私たちの前に座っていた1歳くらいの子は怖さのあまり泣き出してしまいました(笑)。

ちなみに、宮崎駿は実際に庭でカリウドバチが毛虫を運んでいくのをなんども目撃していたそうで、そこから着想を得て映像にしたと語っています(『毛虫のボロ』パンフレットより)。

人間も出てくる

終盤には自転車に乗る女の子やその母親など、人間も出てきます。

宮崎駿は完成した映画を観た妻の朱美さんから「人間が出てきたらホッとした」と言われたそうです(パンフレットより)。

宮崎駿自身も同じように「人間が出てきたらホッとしちゃった」と語っています。

タモリの声を怖がってしまい、終始顔を伏せていたうちの娘(4歳)も自転車の女の子が出てくるシーンからは顔を上げ、安堵の表情でスクリーンを眺めていました。

タモリが声と音を担当

作品内の声と音のほぼ全てをタモリが担当しています。

タモリは以前にもジブリ美術館のみで公開される短編作品『やどさがし』(2006年)で声と音を担当しました。

人の声で作品内の音を表現するというのは『風立ちぬ』でも使われた手法です。

養老孟司との対談の中で、宮崎駿はタモリについてこう語っています。

宮崎:音に関してはどうしてもタモリさんにやって頂きたくて、何度もラブコールを送って(笑)、ようやくやっていただけたんです。
養老:あの人はまさに天才だなと思います。
(中略)
宮崎:タモリさんは天才ですから、類似品はない。こう来るかなと思ったら、全く違うアプローチをしてきたり、全部予習して来て下さって、一発でやってくれました。だからこっちも余計なことを言わない。彼の才能に全部任せました。
出典:『毛虫のボロ』パンフレット

二人が口を揃えて「天才」と呼ぶタモリの声芸は必聴です。

『毛虫のボロ』展開催

2018年3月14日より、ジブリ美術館2Fギャラリーにて『毛虫のボロ』展が開催されています。

宮崎駿が毛虫のボロを作るきっかけになった漫画『空飛ぶあくま』や、作中で使われていたCG技術についての解説などが展示されています。

会期:2018年3月14日(水)~ 2018年8月(予定)

場所:三鷹の森ジブリ美術館 2Fギャラリー

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毛虫のボロの制作背景

きっかけは少年時代に読んだ『空飛ぶあくま』

毛虫のボロに原作はありませんが、きっかけになったのは宮崎駿が少年時代に読んだ『空飛ぶあくま』(花野原芳明)という漫画。虫の世界の残酷さに衝撃を受け、大人になってからも記憶の片隅に残っていたとのこと。

『空飛ぶあくま』は12話の短編漫画を収録した『コグモの冒険』(1948年)という作品の中の一話です。

同じく『コグモの冒険』の中に出てくる『水のクモ』はジブリ美術館で上映される短編アニメ『水グモもんもん』を作るきっかけになりました。

毛虫のボロの構想は「もののけ姫」以前から

宮崎駿が毛虫を主人公にした新しい短編アニメを制作中というニュースを知ったとき、私は、『もののけ姫』のときにもそのような作品を作るという話があったことを思い出しました。

『紅の豚』以降、長編アニメの監督から遠ざかっていた宮崎駿の新作は、どうやら毛虫を主人公にした作品になるらしいという話(たしかテレビか雑誌のインタビューでした)を聞き、「ああそうなんだ」と思っていたところ発表されたのが『もののけ姫』だったので、「あれ、あの毛虫の話はどこいっちゃったんだろう」と思ったことを覚えています。

▼1995年に宮崎駿が描いた『ボロ』のスケッチ。
kemushi-no-boro-sketch-1995

調べてみると、やはり『毛虫のボロ』は『もののけ姫』と同時期に劇場公開用長編アニメ映画として企画されていたそうです。しかし、ジブリのプロデューサー鈴木敏夫が、「人間が出てこない物語を長編として成立させるのは難しい」と判断し、“アクション映画”である『もののけ姫』の方をやることになりました(参照:鈴木敏夫プロデューサーに聞く“現在進行形”の宮崎駿監督とスタジオジブリ

CG制作には若手クリエイターが参加

『毛虫のボロ』は、宮崎駿が初めて本格的にCGを使ったアニメーション制作に挑戦するということでも話題になっています。

『毛虫のボロ』がCGを使った作品になると決まった段階で鈴木敏夫は宮崎駿に2つの選択肢を提案したそうです。一つは宮崎の親友でもあるジョン・ラセターのピクサーと一緒に作るというもの。もう一つは日本の若いCGスタッフに制作に参加してもらうというもの。宮崎は後者を選んだわけですが、やはり言葉の壁を考えてピクサーとの制作は断念したようです(参照:鈴木敏夫プロデューサーに聞く“現在進行形”の宮崎駿監督とスタジオジブリ

CG制作には、CGアニメーターの櫻木優平が参加。櫻木優平は2015年、アヌシー国際アニメーション映画祭のコンペティション部門に出品された岩井俊二監督の『花とアリス殺人事件』のCGディレクターを務めたことでも注目を集めました。

櫻木優平によると、手描きアニメーションを作り続けてきた宮崎と共に仕事をしていく中で、手描きとCGの感覚の違いのようなものを感じることもあったようです(参照:cgworld.jp

その後、櫻木は途中で抜けることに。

CG作画監督はCGアニメーターの中村幸憲が務めています。

なぜ宮崎駿はCGアニメに挑戦するのか

『崖の上のポニョ』では徹底的に手描きのアニメーションにこだわった宮崎駿が今回、CGによるアニメーション制作という決断をした理由はなんだったのでしょうか。やはりここでもきっかけを作ったのは鈴木敏夫だったようです。鈴木は長編アニメから引退した宮崎に、「気分転換」にCGでの制作を提案してみたとのこと。心機一転新たな手法にチャレンジすることで、モチベーションも上がると考えたようです。

それに加えて、年齢からくる体力的な衰えを考えると、手描きのみでのアニメーション制作は難しいという理由もあったと思います。ジブリ美術館の短編映画『パン種とタマゴ姫』は約12分と短い作品ながら作画枚数は2万4千枚にも上り、その制作過程を追ったNHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』では、手描きアニメーションの制作の過酷さが紹介されていました。

▼『パン種とタマゴ姫』の内容や感想についてはこちら。

また、これは私の個人的な憶測ですが、息子である宮崎吾朗が『山賊の娘ローニャ』でCGによるアニメ制作に取り組んだことも影響しているような気がします。なにかと負けず嫌いで色々な人(手塚治虫、高畑勲等々)に対抗意識を燃やしてきた宮崎駿ですから、息子の作品を観て何か刺激を受けたところがあるのかもしれません。完全に私の推測ですが。

作品を実際に観賞した限りでは、CGの表現は最低限に抑えられている印象を受けました。ある程度完成した段階で宮崎駿が納得せず、かなり手直ししたとも言われています。

CGを取り入れた作品制作の苦労についてはパンフレットでCG作画監督の中村幸憲が語っているので、興味のある方は購入してみてください。

パンフレットはジブリ美術館の図書閲覧室「トライホークス」で販売されています。我が家では娘お気に入りの絵本として重宝しています。

以上、宮崎駿監督の新作短編映画『毛虫のボロ』についてでした。

▼毛虫のボロの制作過程を追ったNHKのドキュメンタリー『終わらない人 宮﨑駿』

▼宮崎駿『風立ちぬ』、高畑勲『かぐや姫の物語』の2作品を同時進行で制作中だったスタジオジブリの1年に密着したドキュメンタリー映画。高畑、宮崎、鈴木の愛憎相半ばする様子が映し出されています。

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