ラスコー展の感想と混雑|実物大の洞窟壁画を間近で体感!

東京・上野の国立科学博物館の特別展「世界遺産ラスコー展〜クロマニョン人が残した洞窟壁画〜」(会期:2016年11月1日 ― 2017年2月19日)に行ってきました。

世界遺産にもなっているラスコー洞窟の壁画やそれを残したクロマニョン人の生活、文化を知ることができる今回の展覧会は、世界各地を巡回している「LASCAUX INTERNATIONAL EXHIBITION」に日本独自の展示を加えた内容となっています。

※東京会場の会期は終了しました。今後は、宮城東北歴史博物館福岡九州国立博物館に巡回します。

以下、『ラスコー展』の感想、混雑状況や所要時間、展示内容についてまとめました。

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ラスコー展の混雑と所要時間

混雑は?

▲待ち時間もなくスムーズに入場できました。

※東京会場の会期は終了しましたが、参考になると思うので記事は残しておきます。

まずはラスコー展の混雑状況をレポートします。ラスコー展の会場は東京・上野公園内にある国立科学博物館。私が行ったのは12月中旬、平日の午前11時頃です。Twitterなどの情報によると土日以外はかなり空いているとのことだったのですが、たしかに混雑はしていませんでした。

ただ、ガラガラというわけではなく、数日前にいくつかのテレビ番組で特集された影響からか、60代、70代くらいの方がけっこういらしてました。若い人は少なかったです(土日や冬休みに入ってくると若い人や子連れの方も増えると思います)。

想定していた以上に人が多い印象でしたが、他の人が邪魔になって展示がじっくり見られないということはありませんでした。

逃げ恥の影響は?

▲ガッキーのポスターも発見

回を追うごとに視聴率を伸ばし、エンディングの「恋ダンス」も話題になったTBSドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」の第10話に『世界遺産ラスコー展』がロケ地として登場しました。

TBSはラスコー展の主催に名を連ねており特集番組も放送していますが、「逃げ恥」の聖地巡礼の仲間入りを果たしたことで混雑への影響もあるかもしれません。

風見は熱烈なアプローチをしてくるポジモンOLの杏奈と、百合ちゃんは同級生でシングルファーザーの田島とそれぞれが一緒にいたところ、偶然にもラスコー展の会場で遭遇してしまう…!というなんともドキドキな展開。
出典:逃げるは恥だが役に立つHP

第10話の放送は12月13日でしたが、それ以降、Twitterの情報などを見る限り特別混雑度が増したというわけでもなさそうです。新垣結衣、星野源の2人がラスコー展を訪れたわけではなかったですしね(石田ゆり子と大谷亮平が遭遇するという内容)。

なお、当日の混雑状況を知りたい方は国立科学博物館のホームページから確認できます(開館時間内のみ見られるようです)。※国立科学博物館の会期は終了しています。

国立科学博物館 混雑状況

所要時間はどれくらい?

すぐ見終わっちゃうだろうなと思っていたのですが、全然そんなことはありませんでした。けっこうなボリューム感です。

パネルに書かれているすべての解説を読み、じっくりと見て回った所要時間約2時間。タッチパネルで操作するものやルーペで拡大して壁画を見られるコーナーなどはさらっと流してしまったので、すべてを満喫しようと思えばもう少し所要時間はかかるかもしれません。

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ラスコー展の感想と展示紹介

▲会場マップ

以下、「世界遺産ラスコー展〜クロマニョン人が残した洞窟壁画〜」の感想を展覧会の章立てにそってまとめました。

※カメラ撮影OKだったものについては写真付きで紹介します。

第1章 衝撃の発見、壁画の危機、そして閉鎖

まず第1章ではラスコー洞窟の壁画が発見されてから閉鎖されるまでの経緯が写真資料と解説文によって紹介されています。

1940年、地元の少年らによって偶然発見されたラスコー洞窟の壁画はたちまち話題となり見物客が殺到。その結果、壁画の保存環境が悪化し(空調設備の影響もあったとか)洞窟は閉鎖されてしまいます。

2万年前の壁画を少年たちが偶然発見したというのは面白い話ですね。

▲入場するとクロマニョン人の親子がお出迎え

入口の近くには実際に発掘された化石人骨に基づいて復元された等身大のクロマニョン人母子が展示されています。服装やボディペインティングも考古学的証拠に基づいているとのこと。古代人類の復元を専門とするフランスの芸術家エリザベット・デネス(Elisabeth Daynes)作。

第2章 よみがえるラスコー洞窟

ラスコー洞窟保全のためにフランス政府は洞窟を閉鎖しましたが(現在も一般には非公開)、1983年、オリジナルの近くにレプリカの洞窟ラスコー2を作り多くの観光客を集めています。

そして、今回来日しているラスコー壁画のレプリカや関連資料の展示がラスコー3と呼ばれているものです。

第2章では、最新技術を用いて作られた10分の1サイズの模型が展示されており、ラスコー洞窟の全体像を把握することができます。

▲10分の1サイズの模型。覗き込むとこんな感じ

洞窟内の通路が非常に狭く、這って進まないと奥に行けない場所もあり、そこまでして壁画を描いた当時の人々の執念はどこから来ているのか、想像が膨らみます。

第3章 洞窟に残されていた画材、道具、ランプの謎

第3章では、ラスコー洞窟内に残されていた道具や画材などが展示されています。中でもラスコー洞窟のクロマニョン人が使っていたというランプはその精巧な作りに驚きました。ヨーロッパの他の洞窟で発見されたランプは作りが粗雑なものが多いそうです。

ラスコー洞窟付近に住んでいたと思われるクロマニョン人は一体どんな人々だったのでしょうか。

第4章 ラスコー洞窟への招待

第4章は本展覧会のメイン展示。実物大の壁画を間近で体感できます。

※TBSドラマ「逃げるは恥だが役に立つ」で石田ゆり子と大谷亮平が遭遇するのもこの展示コーナーです。

展示されている壁画は以下の5つ。

  • 褐色のバイソン・ヤギの列・ウマの列
  • 黒い牝ウシ・ウマの列・謎の記号
  • 背中合わせのバイソン
  • 泳ぐシカ
  • 井戸の場面

異なる色を用いて立体感を出したり、動物を重ねて描くことで躍動感を表すなど、その豊かな表現に見入ってしまいました。数分間隔で照明が暗くなり、壁画の輪郭がブルーのライトで浮かび上がる様子はとても幻想的です。

▲黒い牝牛の周りに20頭ほどの馬が重なるようにして描かれています。牝牛の足元には四角形の謎の記号が。

▲川を渡っているように見える鹿の群れ。高さ2mのところに描かれており、梯子を使ったという説も。

▲バイソンの体の一部が赤くなっているのは、冬から春にかけて毛色が変化することを表現しているとのこと。

▲井戸の場面と呼ばれる壁画。ラスコー洞窟の最も深い所にあります。鳥の頭のようなものを持つ鳥人間がバイソンの角の前で倒れています。

▲鳥人間を拡大。まったく意味不明ですが、どこか滑稽な姿が笑えます。

▼ラスコー展の公式キャラクターはトリ人間。会場のこども向けパネルにも登場します。※GIF画像を再生すると壁画からトリ人間がむくっと起き上がります。

第5章 ラスコーの壁画研究

第5章では、ラスコー壁画の調査研究の歴史やフランスで製作された映像、タッチパネルのゲームなどが展示されています。

映像の展示は混雑しますが、ラスコー壁画の特徴がとても分かりやすく紹介されているのでぜひ見てください(時間は7分ほど)。

また、壁画のモチーフとなった当時の動物の大きさなども紹介されています。

▲当時生息していた動物の大きさはこんな感じ。クロマニョン人、意外とデカい!

▲史上最大級の鹿、オオツノジカは肩までの高さ1.8mと大迫力。ラスコーには描かれていませんが、他のクロマニョン人の壁画に登場します。

第6章 クロマニョン人の世界:芸術はいつ生まれたのか

第6章ではクロマニョン人の生活、文化、芸術についての展示がそろっていて、非常に見ごたえがありました。※日本のみの特別展示

人の横顔が彫られた石器や、ふくよかな体つきの旧石器時代のヴィーナスなど、クロマニョン人の高度な技術・文化を垣間見ることができます。特に裁縫技術はかなり高度なものだったことが分かります。

このコーナーは基本的にカメラ不可ですが、等身大のクロマニョン人像は撮影可能です。着ている服や装飾品などは考古学的証拠に基づいて再現されています。女性が頭に被っている貝殻のビーズは実際に発掘された埋葬人骨にも残っていました。その人骨もこのコーナーに展示されています。

▲実際に発見された化石骨を基に復元されたクロマニョン人。何を指さしているのでしょう。

第7章 クロマニョン人の正体:彼らはどこから来たのか

第7章ではクロマニョン人とは何者だったのか、映像展示と解説パネルによってその正体に迫ります。

特に同時期に生きていたネアンデルタール人との比較やその関係はとても興味深かったです。

クロマニョン人はネアンデルタール人と交配していた可能性があると言われており、現代人にもネアンデルタール人の遺伝子が数パーセント残っていると言われています。

第8章 クロマニョン人がいた時代の日本列島

最後の展示はクロマニョン人が生きていた時代の日本列島にフォーカスしたもの。美しい黒曜石から作られた石器などが展示されています。

日本ではクロマニョン人が残したような精巧な作りの装飾品などはあまり発掘されていませんが、海洋技術などは非常に高いものを持っていたそうです。

日本列島はヨーロッパと土壌が異なることから、当時使用していた道具類が発掘されにくい可能性があるとのこと。

この時代の後に縄文時代が始まります。

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洞窟壁画以外にも見どころあり

今回のラスコー展は洞窟壁画だけでなくクロマニョン人の生活・文化・芸術を網羅したものになっています。

時代が2万年前近くまでさかのぼるので、展示はどうしても実際の「もの」よりもレプリカや解説文が多くなりますが、その分こちら側の想像力が刺激されます。

私が行ったのは平日ということもあり小さなお子さん連れの方はあまり見かけませんでしたが(抱っこ紐で赤ちゃんを連れていた方はいました)、大人がいろいろ説明しながら見ることで子どもも楽しめると思います。

特に小学生、中学生にはおすすめです。

実際に授業で習った内容を目の前で見られるというのはとても良い経験になると思います。

展覧会概要・巡回情報

会期 / 会場 / チケット

※東京会場の会期は終了しました。

会期:2016年11月1日(火) ― 2017年2月19日(日)

開館時間:9時 ― 17時(金曜日は20時まで)

休館日:月曜日、12月28日~1月1日、1月10日
※12月26日(月)、1月2日(月)、1月9日(月)、2月13日(月)は開館。

会場:国立科学博物館
〒110-8718 東京都台東区上野公園7‒20

・JR「上野駅」公園口から徒歩約5分
・東京メトロ銀座線・日比谷線「上野」駅から徒歩約10分
・京成線「京成上野駅」から徒歩約10分

チケット(当日券):一般1600円、小・中・高校生600円

※開催概要・アクセス・チケット情報の詳細はラスコー展公式HPをご覧ください。
http://lascaux2016.jp/outline.html

巡回予定

世界遺産ラスコー展は、宮城、福岡に巡回します。

宮城・東北歴史博物館:2017年3月25日(土)~5月28日(日)

福岡・九州国立博物館:2017年7月11日(火)〜9月3日(日)

※展示資料は一部、会場によって異なります。

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