かつかつ主夫@katsu2_shufuです。
東京の上野の森美術館で開催中のデトロイト美術館展(会期:2016年10月7日 – 2017年1月21日)に行ってきました。
愛知(豊田市美術館)、大阪(大阪市立美術館)と巡回し、大阪では20万人の来場者を集めた本展覧会。カメラでの撮影がOKということでも話題です。モネ、ゴッホ、ルノワール、モディリアーニ、マティス、ピカソなど、デトロイト美術館が誇るコレクション65,000点の中から選りすぐりの52点(初来日15点)が展示されています。
以下、展覧会の感想や撮影可能日の雰囲気、気になる混雑についてまとめました。
▼こちらもおすすめ。国立新美術館で開催のミュシャ展に行ってきました。
目次
デトロイト美術館展の混雑と所要時間
混雑状況
私が行ったのは10月11日火曜日の12時頃。せっかくなので撮影可能日に行ってみることにしました。
私は見逃したのですが、ちょうどこの日の朝にめざましテレビで「ゴッホの100億円の自画像が撮影できる!」といった感じの特集が放送されたようで、その影響もあってか平日の昼にもかかわらずけっこうな混雑でした。
▼最も混み合っていたのはやはりゴッホの自画像。
チケット売り場には2、3人並んでいただけで、待ち時間なしで入場できました。
会場内はカメラ撮影OKということで普段の美術館の雰囲気とは異なります。みなさん絵をじっくり見るというよりデジカメやスマホを手に撮影のタイミングをはかっている感じ。至る所でシャッター音が聞こえてきます。
ちなみにフラッシュ撮影は禁止なのでご注意を。
また、中にはSNSなど不特定多数への公開が禁止されている作品もあります。
▼この表示があるものはSNSなどへの投稿は不可となります。
ゴッホとゴーギャン展(東京都美術館)やダリ展(国立新美術館)、クラーナハ展(国立西洋美術館)など、同時期に集客力の高い展覧会が開催されているのでデトロイト美術館展に人が集中するといったことはなさそうです。
Twitterなどの情報を見る限り、土日の混雑もそれほどではないようですが、確実に混雑回避したい方は、撮影OKな月曜、火曜以外の平日に行くのがおすすめです。
所要時間
全ての解説を読み、気に入った作品を撮影しながらの所要時間は約1時間20分でした。
出品されている作品数は全52点と少ないですが、撮影したり解説を読んだり鑑賞したりで意外と時間はかかりました。
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音声ガイドは鈴木京香さん
デトロイト美術館展の音声ガイドは女優の鈴木京香さん。
出典:デトロイト美術館展HP
鈴木京香さんはアートに造詣が深く、NHKのSWITCHインタビューではギャラリストの小山登美夫さんと対談されていましたね。
音声ガイドでは、小説家・原田マハさん(『カフーを待ちわびて』、『デトロイト美術館の奇跡』)によるボーナストラックも聴くことができます。
貸出価格:520円(税込)
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感想と作品紹介|モネ、ゴッホ、ピカソ、マティスetc
続いてデトロイト美術館展の感想と印象に残った作品を紹介します。
デトロイト美術館とは
▼デトロイト美術館の目玉であるディエゴ・リベラのフレスコ画≪デトロイト産業(Detroit Industry Murals)≫(1932-1933)
上野の森美術館入り口近くの壁全体にレプリカが描かれています。
出典:wikipedia
上野の森美術館の会場に入ると、まずはデトロイト美術館の歴史を説明したパネルや映像が展示されています。
デトロイト美術館(Detroit Institute of Arts,通称DIA)は1885年に創立。アメリカの公共美術館として初めてゴッホ、マティスの作品を入手した美術館です。コレクション総数は約65000点。年間の訪問者数は70万人以上(出典:wikipedia)。
ディエゴ・リベラのフレスコ画の≪デトロイト産業≫でも描かれたようにデトロイト美術館のあるミシガン州デトロイト市は自動車産業で栄えました。しかし、20世紀後半の自動車産業の衰退により、2013年7月、デトロイト市は財政破綻。その煽りを受けてデトロイト美術館所蔵の名画の売却も検討されました。
しかし、国内外の支援と市民の売却反対の声により市は方針を転換。名画は流出を免れます。
本展覧会では、市民が守り抜いたコレクションの中から選りすぐりの52点が展示されています。そのうち15点は初来日です。
デトロイト市の財政破綻による名画流出の危機を市民が救う経緯は、原田マハさんの小説『デトロイト美術館の奇跡』に描かれています。
▼実話を元にした原田マハさんの小説『デトロイト美術館の奇跡』
▼デトロイト美術館展 プロモーション動画
作品紹介|目玉はゴッホの自画像。ドイツ表現主義もおすすめ
展覧会の構成は全4章立て。
- 第一章 | 印象派
- 第二章 | ポスト印象派
- 第三章 | 20世紀のドイツ絵画
- 第四章 | 20世紀のフランス絵画
写真撮影可能な火曜日に行ったので、気に入った作品の写真をパシャパシャ撮ってきました。以下、いくつか紹介します。
≪ピエール・オーギュスト・ルノワール / 白い服の道化師 / 1901-1902年≫
モデルは次男で後にフランスを代表する映画監督になるジャン・ルノワール。ジャンは1894年生まれなので、おそらく7歳か8歳の頃の作品だと思われます。この作品以外にもルノワールは息子たちをモデルに心温まる作品を多く残しています。
≪ピエール・オーギュスト・ルノワール / 座る浴女 / 1903-1906年≫
ルノワールが生涯描き続けた裸婦画の代表作の一つ。他にも同じ構図で複数描いていますが、足先まで描かれているのはこの作品だけです。
▼ルノワールの作品はこちらのページでも紹介しています。
≪ギュスターヴ・クールベ / 川辺でまどろむ浴女 / 1845年≫
写実主義的手法で描かれたギュスターヴ・クールベの裸婦画。クールベは、神話や伝説など古典的なモティーフばかり描き現代社会とのつながりが希薄なアカデミック絵画に対して批判的でした。本作は当時の衣服を描くことで現実社会との接点を示しています。現実に存在するようなリアルさで描かれた無防備な女性の姿態は、神話や聖書を題材とし女神やニンフの裸婦画が主流だった当時の人々を驚かせました。本展覧会が初来日の作品です。
≪カロリュス=デュラン / 喜び楽しむ人々 / 1870年≫
伝統的なアカデミック様式で描かれた作品。印象派の作品の中に並んでいるのでひと際その写実性が目を引きます。
≪エドガー・ドガ / 楽屋の踊り子たち / 1879年頃≫
バレエを題材とした作品を多く残しているドガは、華やかな舞台本番ではなく練習風景など飾り気のない場面を好んで描きました。ドガはオペラ座の定期会員(座席を年単位で購入するシステム)になっており、その特権で楽屋や稽古場など、一般の人が入れないようなところに自由に出入りできたそうです。
≪クロード・モネ / グラジオラス / 1876年頃≫
今回出品されている唯一のモネの作品。日差しを浴びるグラジオラスの周りには蝶々が描かれています。日傘を差している女性はモネの妻カミーユです。
≪カミーユ・ピサロ / 小道 / 1889年頃≫
点描画法で描かれた村の風景画。印象派を代表する画家の一人、カミーユ・ピサロの作品。個人的に大好きな画家です。
≪ポール・セザンヌ / サント=ヴィクトワール山 /1904-1906年頃 ≫
セザンヌの作品のモティーフとして数多く登場するサント=ヴィクトワール山。
≪ポール・ゴーギャン / 自画像 / 1893年頃≫
ポール・ゴーギャンの自画像。ゴーギャンの自画像は東京都美術館で開催されている「ゴッホとゴーギャン展」でも見えることができます。
≪フィンセント・ファン・ゴッホ / 自画像 / 1887年≫
その価値100億円とも言われるゴッホの自画像。今回の展覧会の目玉作品です。意外と小さい作品で、「え!?ちっちゃ!」と言ってる人もいました。展覧会の会場内で一番混雑する箇所です。
月曜、火曜は写真撮影する人が殺到すると思われるので、じっくり見たい方は撮影不可の日に行くことをおすすめします。
≪フィンセント・ファン・ゴッホ / オワーズ川の岸辺、オーヴェールにて / 1890年頃≫
「オワーズ川の岸辺、オーヴェールにて」は今回が初来日。ゴッホらしい躍動的な筆使いが印象的です。
≪パウラ・モーダーゾーン=ベッカー / 年老いた農婦 / 1905年頃≫
個人的に今回の展覧会で一番印象に残った作品。作者はドイツ表現主義の女性画家で31歳の若さでこの世を去ったパウラ・モーダーゾーン=ベッカー。老農婦を描いたこの作品は、日々の厳しい労働を連想させる画面中央に描かれた節くれだった両手が目を引きます。虚ろな眼差し、上部で初夏の光と溶け合うリンデンの葉の色合いが印象的でした。
≪エルンスト・ルートヴィヒ・キルヒナー / 月下の冬景色 / 1919年≫
ドイツ表現主義の代表的画家の一人、キルヒナーの作品。第3章の「20世紀ドイツ絵画」の展示はなかなか見ごたえのある作品が揃っています。ゴッホやピカソの展示スペースに比べると比較的空いているのでおすすめです。
≪アンリ・マティス / コーヒータイム / 1916年頃≫
1906年から1913年までの間、アルジェリアとモロッコを旅したマティスが当時の経験を投影して描いた≪東洋風の昼食≫とも呼ばれる作品。
≪アンリ・マティス / ケシの花 / 1919年頃≫
こちらもマティスの作品。花瓶に生けられたケシの花とグラジオラスが背後の屏風に描かれた花、壺の装飾と渾然一体となっています。
≪アメデオ・モディリアーニ / 帽子を被った若い男性 / 1919年≫
エコール・ド・パリの画家の一人で、日本の藤田嗣治とは親友関係にもあったモディリアーニの作品。顔と首が長く、瞳がないのが特徴的です。今回の展覧会では彼の作品が3点展示されています。
- ピカソの作品について -
今回展示されているピカソの作品(全6作品)はSNSなど不特定多数への公開が禁止となっています。
ピカソの作品のうち、『マヌエル・パリャレスの肖像(1909)』、『読書する女(1938)』、『座る女性(1960)』は初来日。それぞれ異なる時期に描かれた作品なので、年代ごとに作風が変わるピカソの醍醐味が味わえます。
立体複製画にさわれる!
▼ゴッホ「オワーズ川の岸辺、オーヴェールにて」の複製画。凹凸があるのが分かるでしょうか。
会場を出ると、ゴッホやモネの作品の立体複製画が展示されているコーナーがあります。リコーが独自開発した「立体複製画制作技術」なるもので作られているとのこと。
ゴッホの『オワーズ川の岸辺、オーヴェールにて』やモネの『グラジオラス』の複製画を触れます。
複製画とはいえ、絵の具が厚塗りされたゴッホ作品に直に触れるというのは不思議な感覚でした。
立体複製画はミュージアムショップで販売しています。値段はかなり高かったです。
展覧会概要|会期、アクセス、チケット
会期:2016年10月7日(金) – 2017年1月21日(土)
※休館日:10月21日(金)
開館時間:9:30 – 17:30
※毎週金曜日、10月22日(土) 9:30 – 20:00
会場:上野の森美術館
〒110-0007 東京都台東区上野公園1-2
チケット(当日券):一般1600円・高校生、大学生1200円・小学生、中学生600円
※小学生未満は無料
詳細は → デトロイト美術館展ホームページでご確認ください。
― 展覧会レビュー関連の記事 ―
※会期が終わっているものもありますが、写真付きで作品を紹介しているので見てみてください。
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