ティツィアーノとヴェネツィア派展の感想と混雑|ダナエ、フローラが来日!

東京・上野の東京都美術館で開催中のティツィアーノとヴェネツィア派展(会期:2017年1月21日〜4月2日)に行ってきました。

15世紀から16世紀にかけてヴェネツィア共和国を中心に活躍したティツィアーノ、ティントレット、パオロ・ヴェロネーゼら、ヴェネツィア派と呼ばれる画家たちの作品を展示しています。

中でも注目なのは、今回が初来日となるティツィアーノの《ダナエ》と、ポスターにも使われているローマ神話の女神《フローラ》です。

以下、「ティツィアーノとヴェネツィア派展」の混雑や展覧会の感想、印象に残った作品、オリジナルグッズについて紹介します。

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ティツィアーノとヴェネツィア派展の混雑と所要時間

混雑は?

▲東京都美術館

まずは、ティツィアーノとヴェネツィア派展の混雑について。

私が行ったのは2月上旬、平日の午後12時過ぎ。早めにランチを済ませてから行きました。

Twitterなどの情報からそれほど混雑していないと予想していましたが、実際、かなり空いていました。チケット売り場にも人は並んでおらず入場までの待ち時間はなし。

会場内もティツィアーノやティントレットなどの人気作品の前にはそれなりに人が集まっていましたが、ストレスなく観ることができました。

《ダナエ》や《フローラ》といった本展覧会の目玉作品もじっくりと観賞可能です。ちなみに、作品によっては照明の関係で近過ぎるとキャンバスが光って見づらいこともあるので、少し離れてみるのがおすすめです。

なお、2月15日(水)、3月15日(水)はシルバーデーにより65歳以上が無料となります。混雑する可能性が高いので要注意です。

日曜美術館の放送後は混雑する可能性あり

私が行った2月上旬は空いていましたが、今回の展覧会は主催がNHKということで、日曜美術館での特集が予定されています。

NHK-Eテレ『日曜美術館』
放送時間:2月26日(日) 9:00~10:00 <再放送>3月5日(日)20:00~21:00

日曜美術館の影響力はかなり大きいので、放送後は入場者数が増えることが予想されます。

所要時間は?

私は12時頃入場して13時半頃に会場を後にしました。所要時間はおよそ1時間半ほど。

今回の「ティツィアーノとヴェネツィア派展」に出展されている作品は絵画が約50点、版画が20点弱と、それほど作品数が多くないので他の展覧会に比べると鑑賞時間は短めでした。

ちなみに全ての展示作品の解説を読み、一つ一つの作品をじっくりと鑑賞しました。

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ヴェネツィア派とは

▲サン・マルコの大鐘楼から見たヴェネツィアの街並み。下に見えるのはサンマルコ広場(2012年撮影)

今回の展覧会はティツィアーノをはじめとしたヴェネツィア派の画家に焦点を当てた展示となっています。

ヴェネツィア派とは、ヴェネツィア共和国において15世紀から16世紀にかけて花開いた美術(特に絵画)の流派で、ベリーニ親子の工房がその中核を担いました。代表的な画家には、今回の展覧会でも作品が展示されているティツィアーノ(1488年/1490年頃~1576年)、ティントレット(1518年~1594年)、パオロ・ヴェロネーゼ(528年~1588年)らがいます。

ダヴィンチやミケランジェロに代表される、フィレンツェ派と対比されて紹介されることが多く、デッサン(素描)を重視したフィレンツェ派に対し、ヴェネツィア派は自由で豊かな色彩が特徴で、人々の感覚に直接訴えかけるような表現を得意としました。

ヴェネツィア派の代表格と言えるティツィアーノの作品は、ルーベンスやベラスケス、ルノワールなど、後世の画家にも大きな影響を与えたと言われています。

▼ティツィアーノを初めとした芸術家に焦点を当て、「水の都」ならぬ「美の都」としてヴェネツィアを読み解いた一冊。

ティツィアーノとヴェネツィア派展の感想と作品紹介

『ティツィアーノとヴェネツィア派展』は、年代順に3章立ての構成となっています。

  1. ヴェネツィア、もう一つのルネサンス[1460-1515]
  2. ティツィアーノの時代[1515-1550]
  3. ティツィアーノ、ティントレット、ヴェロネーゼ ― 巨匠たちの競合[1550-1581]

以下、本展覧会の感想、印象に残った作品を紹介します。

《ティツィアーノ・ヴェチェッリオ / フローラ / 1515年頃》

今回の展覧会の目玉作品の一つ《フローラ》は、ティツィアーノ初期の代表作です。描かれているのはローマ神話に登場する花と春、豊穣を司る女神フローラ。右手でバラの花束を軽く握りしめています。

ヴェネツィアの高級娼婦を女神に仮託して描いたとも言われていますが、実在のモデルを忠実に描いたというよりは、ティツィアーノの理想とした女性美を色濃く投影したものと考えられます。

《ティツィアーノ・ヴェチェッリオ / ダナエ / 1544-46年頃》

ティツィアーノの《ダナエ》も本展覧会の目玉作品です。日本では初公開となります。ギリシア神話に登場するアラゴスの王女で地下室に幽閉されていたダナエが、黄金の雨に化身したゼウスに誘惑される場面が描かれています(神話ではダナエは男児を身ごもります)。

同じモチーフでほぼ同じ構図の作品が少なくとも5点描かれていると言われ、現在は4点の絵画が各地の美術館に所蔵されています。

今回、日本初公開となった《ダナエ》は一連の作品の中で最初に描かれたものです。ダナエはほとんど裸の状態でベッドに横たわり、黄金の雨(金貨として描かれている)に化身したゼウスを恍惚の表情で見つめています。画面右に描かれているのはギリシア神話の愛の神、エロスです。

ミケランジェロが現在プラド美術館に所蔵されているバージョンの《ダナエ》を目にしており(今回来日しているバージョンとは異なります)、ティツィアーノの色使いと様式を称賛した一方で、デッサン力に疑問を呈したとも言われています。

豊かな色彩表現が特徴的なヴェネツィア派と、ミケランジェロやダヴィンチに代表される、デッサンを重視したフィレンツェ派のスタイルの違いを伺わせる興味深いエピソードですね。ただ、ミケランジェロと共に《ダナエ》を目にし、この話を記録している画家・建築家のジョルジョ・ヴァザーリが「デッサン力こそがもっとも重要である」という自身の考えを広めるためにミケランジェロの言葉をねつ造した可能性もあると言われています。

《ティツィアーノ・ヴェチェッリオ / マグダラのマリア / 1567年》

マグダラのマリアをモチーフに描いたティツィアーノ晩年の作品。1567年の作品なのでティツィアーノが80歳近い年齢の頃に描かれたものです。画面右下のドクロ、左下の香油壺はアトリビュート(attribute)で、描かれた人物がマグダラのマリアであることを示しています。

ちなみに、マグダラのマリアと言えば、2016年に開催されたカラヴァッジョ展で、《法悦のマグダラのマリア》が世界初公開されて話題になりました。

▼カラヴァッジョ展の感想はこちら

《ティツィアーノ・ヴェチェッリオ / 復活のキリスト / 1511-12年》

ティツィアーノ初期の作品《復活のキリスト》。ティツィアーノが20代前半の頃に描いたものです。イエス・キリストと言えばほっそりと痩せているイメージですが、この作品では青空を背景に健康的な力強い身体つきで描かれています。

キリストが持つ白地に赤十字の旗は、キリストの復活を意味しています。

《ジョヴァンニ・ベッリーニ / 聖母子(フリッツォーニの聖母) / 1470年頃》

初期のヴェネツィア派の代表的な画家の一人、ジョヴァンニ・ベッリーニ(1430年頃-1516年)による聖母子画。ベッリーニはその生涯で数多くの聖母子像を残しています。この作品は淡いブルーで描かれた空がとても印象的でした。手すりの向こう側に聖母子がいる構図はベッリーニが広めたと言われています。

《ヤコポ・ティントレット / レダと白鳥 / 1551-55年頃》

ティツィアーノらと並んでヴェネツィア派の代表的画家の一人に数えられるティントレット。本作《レダと白鳥》はギリシア神話の神ゼウスが白鳥に姿を変え、スパルタ王テュンダレオースの妻レダを誘惑したという話が元になっています。背景の布地の色合いは明瞭で陰影がはっきりとしており、ダイナミックな構図と相まって画面全体に勢いが感じられます。

ちなみに、「レダと白鳥」は西洋美術においてお馴染みの題材で、ダヴィンチやミケランジェロ、コレッジョ、セザンヌなどもこのモチーフの作品を制作しています。

《パオロ・ヴェロネーゼ / 聖家族と聖バルバラ、幼い洗礼者聖ヨハネ / 1562-65年》

ルネサンス後期のヴェネツィアを代表する画家、パオロ・ヴェロネーゼの《聖家族と聖バルバラ、幼い洗礼者聖ヨハネ》は、その美しい色彩に目を奪われます。キリスト教の聖人バルバラの金色の髪と衣服とが溶け合う光沢の表現は優れた色彩感覚を持つヴェロネーゼの真骨頂です。

《パルマ・イル・ヴェッキオ / ユディト / 1525年頃》

ティツィアーノとほぼ同世代のパルマ・イル・ヴェッキオ(1480年-1528年)の《ユディト》はそのふくよかな身体つきが特徴的。旧約聖書の『ユディト記』(ユダヤ教、プロテスタントでは外伝の扱い)に登場する女性ユディトが敵将ホロフェルネスの首を斬り落とした場面を描いています。

このモチーフはカラヴァッジョクラーナハ、クリムトなどによっても描かれていますが、パルマ・イル・ヴェッキオのこの作品はユディトの体形が他の作品とはかなり異なっています。

ちょうどドイツルネサンスの画家、クラーナハの日本初の大回顧展で《ホロフェルネスの首を持つユディト》を観てきたばかりだったのでそのギャップに驚きました。

▼東京の国立西洋美術館、大阪の国立国際美術館で開催のクラーナハ展。

この他にも、セバスティアーノ・デル・ピオンボの《男の肖像》、ティツィアーノの《教皇パウルス3世の肖像》、ティントレットの《ディアナとエンディミオン》などが印象に残っています。

▼国立新美術館、国立国際美術館で開催された『ヴェネツィア・ルネサンスの巨匠たち』に準拠した内容の画集(Kindle版)。ティツィアーノやティントレット、ヴェロネーゼらの作品が数多く収録されています。

音声ガイドは別所哲也

『ティツィアーノとヴェネツィア派展』の音声ガイドを務めるのは俳優の別所哲也。

《フローラ》、《ダナエ》など、本展覧会の目玉作品の解説から、ティツィアーノと同時代の巨匠ミケランジェロのエピソードまで収録されています。

料金:520円(税込)
※毎月26日はフローラの日ということで半額の260円になります。

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オリジナルグッズ|チョコレート、ネックレスetc

展示会場を抜けた先にあるショップでは、ティツィアーノとヴェネツィア派展のオリジナルグッズが販売されています。

イタリアの老舗「イカム社」とコラボレーションしたオリジナルのチョコレートや、同じくイタリアのDESEO(デセオ)とコラボしたビスコッティなど、おそらくバレンタインデーやホワイトデーを意識した商品や、アクセサリーパーツの専門店、貴和製作所とコラボしたネックレスなどが販売されています。

もちろん、定番のポストカードやクリアファイル、展覧会のカタログなども買えますよ。

開催概要

会期・アクセス・チケット

『ティツィアーノとヴェネツィア派展』

会期:2017年1月21(土) ~ 4月2日(日)

会場:東京都美術館 企画展示室
〒110-0007 東京都台東区上野公園8−36

開室時間:9:30~17:30
※金曜日は20:00まで

休室日:月曜日、3月21日[火](ただし、3月20日[月・祝]、27日[月]は開室)

チケット(当日券):一般1600円、大学生・専門学校生1300円、高校生800円、65歳以上1000円
※中学生以下は無料

詳細は、ティツィアーノとヴェネツィア派展ホームページでご確認ください。

巡回はある?

今回の『ティツィアーノとヴェネツィア派展』は残念ながら巡回の予定がありません。上野の東京都美術館のみでの開催となります。

東京を訪れる予定がある方は、ぜひ東京都美術館にも立ち寄ってみてください。

以上、かつかつ主夫でした。

― 展覧会レビュー関連の記事 ―

※会期が終わっているものもありますが、印象に残った作品などを写真付きで紹介しています。

▼ティツィアーノとほぼ同時代にドイツで活躍したクラーナハ大回顧展のレビュー。

▼『ミュシャ展』で幻の大作《スラヴ叙事詩》を観てきました。

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▼ゴッホとゴーギャン展に行ってきました。

▼クロマニョン人は絵が上手い!世界遺産ラスコー展の感想。

▼2016年に開催されたダリ展の感想と作品紹介。

▼2016年に60万人を集めたルノワール展のレビュー。

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