かつかつ主夫@katsu2_shufuです。
上野の東京都立美術館で開催されたゴッホとゴーギャン展(会期:2016年10月8日-2016年12月18日)に行ってきました。
※現在は愛知県美術館で開催されています(会期:2017年1月3日-2017年3月20日)。
一時期共同生活を送っていた二人の画家の関係に焦点を当てるという面白い試みの展覧会です。以下、『ゴッホとゴーギャン展』の感想や印象に残った作品の紹介、気になる混雑についてまとめました。
▼草間彌生展(国立新美術館)に行ってきました。
ゴッホとゴーギャン展の混雑と所要時間
▲東京都美術館
― 混雑 -
ゴッホとゴーギャン展(東京都美術館)の混雑についてレポートします。※会期は終了しましたが、参考として残しておきます。
私が行ったのは開幕初日の10月8日(土曜)の翌日、10月9日(日曜)午後1時半頃。人気のゴッホ、ゴーギャンの作品が見られることと開幕直後ということもあってか結構な混雑具合でした。
東京都美術館館内にあるチケット売り場には列が出きていましたが、前売りを購入済みだった私はそのまま会場へ。待ち時間もなく入場できました。
会場内はかなり混み合っていて、特に最初の部屋のゴッホの作品の周りは人だかりができていました。ただ、人の頭越しに後ろからしか観られないということはありません。上手く立ち回れば全ての作品を目の前で鑑賞することも可能です。じっくり見たい作品に関しては人がはけるまでしばらく待つといいと思います。
▼ゴッホが1888年に描いた収穫。「他のすべての作品を完全に圧倒する」と語ったという自信作です。やはりゴッホの作品の周りには人だかりができていました。
(フィンセント・ファン・ゴッホ / 収穫 / 1888年 / ファン・ゴッホ美術館)
― 作品鑑賞のコツ|順番に観る必要はない -
作品鑑賞のコツは順番に見ないことです。日本の美術館で半ば慣例化してしまっている「列を作って横に移動しながら順番通りに作品を観る」なんていうルールは本来存在しません。展示の規模や会場の広さなどが異なるので一概に比較できませんが、私の知る限りでは、ヨーロッパやアメリカの美術館で列を作るなんてことはありません。皆好きな作品を勝手に移動してみていくものです。
混雑の度合いにもよりますが、皆が並んで見ない方が会場に人がばらけて局所的な混雑も減少すると思います。
ゴッホとゴーギャン展は多くのメディアに取り上げられており、会期中ずっと混雑は続くものと思われます。律儀に並ぶのではなく、ぜひ好みの作品を中心に自由に会場内を移動してください。
ちなみに、混雑をできる限り回避したい方は、私の経験上、平日のお昼頃をおすすめします。
▼ゴーギャンの鵞鳥の戯れ。タヒチ渡航の旅費捻出のために競売にかけられた作品のうちの一点。
(ポール・ゴーギャン / 鵞鳥の戯れ / 1888年 / 個人蔵)
▼愛知会場でも混雑時期や時間帯は東京会場と共通しているものと思われます。
ゴッホとゴーギャン展、少しでも空いてるときに見たい!という方のために:一般的には会期頭と会期末が混雑しますので、中頃が狙い目です。一日では朝一と午後一が混雑しますので、正午前後か夕方が狙い目。また毎週金曜日は20時までの夜間開館で、ここも狙い目です(最終入館は19:30まで)。
— 愛知県美術館 (@apmoa) 2017年1月4日
― 所要時間 -
解説文の全てに目を通し、全作品を観て回った所要時間は約1時間40分でした。作品数は全部で68点(うちセザンヌの作品1点は急遽展示取りやめとのこと)とそれほど多くないので、一つ一つの作品をじっくり鑑賞しました。
▼パリ時代のゴッホが描いたモンマルトル、ムーラン・ド・ラ・ギャレットの裏。
(フィンセント・ファン・ゴッホ / モンマルトル、ムーラン・ド・ラ・ギャレットの裏 / 1887年 / ファン・ゴッホ美術館)
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『ゴッホとゴーギャン展』感想
『ゴッホとゴーギャン展』は5章立てとなっています。
1章 近代絵画のパイオニア誕生
2章 新しい絵画、新たな刺激と仲間との出会い
3章 ポン=タヴェンのゴーギャン、アルルのファン・ゴッホ、そして共同生活へ
4章 共同生活後のファン・ゴッホとゴーギャン
5章 タヒチのゴーギャン
ゴッホとゴーギャンの関係に焦点を当て、二人が共同生活に至るまでの過程とその後を作品と解説文によって辿っていく構成になっています。
二人の天才画家の共同生活
▼ゴッホが1888年に描いた黄色い家(本展覧会未出品)。二人はここで2か月間の共同生活を送りました。
(フィンセント・ファン・ゴッホ / 黄色い家 / 1888年 / ファン・ゴッホ美術館)
二人の共同生活とはどのようなものだったのでしょうか。
ゴッホとゴーギャンが南フランスのアルルで共同生活を始めたのは1888年10月23日。すでにアルルで生活していたゴッホは、ゴーギャンが到着するまでの間、自信作を揃えておかねばという焦りから急ピッチで作品の制作に取り組んだそうです。
▼ゴーギャンがアルルに来る直前にゴッホが描いたアルルの部屋(本展覧会未出品)。ゴーギャンのための椅子も用意されています。
(フィンセント・ファン・ゴッホ / アルルの寝室 / 1888年 / ファン・ゴッホ美術館)
一般的には同じポスト印象派に位置づけられる二人ですが、その作風や絵画表現に対する考え方の違いは顕著で、いざ共同生活が始まると意見がぶつかりあい激しく議論を交わすようになります。次第に関係は悪化。当時ゴッホは35歳、ゴーギャン40歳。性格や芸術観を相手に合わせて柔軟に変化させるには難しい年齢だったのかもしれません。しかも二人とも超個性的な天才画家です。
1888年12月23日、ゴッホは有名な耳切り事件を起こしアルル市立病院に入院。12月24日、ゴーギャンから電報で知らせを受けたゴッホの弟テオが病院にゴッホを見舞います。翌日、ゴーギャンはテオと共にパリに戻りました。
「画家同士が相互扶助を図り共に生活しながら作品を制作する」というゴッホが夢見た共同生活は、2か月(9週間)で終わりを告げました。
▼1888年11月にゴッホが描いたゴーギャンの椅子。椅子の上の本は思索に基づいて作品を制作したゴーギャンを表しています。(フィンセント・ファン・ゴッホ / ゴーギャンの椅子 / 1888年 / ファン・ゴッホ美術館)
自分の眼で見た現実の世界を描いてきたゴッホに対し、ゴーギャンは記憶や想像に基づいて作品を描くことを重視していました。実際に見た景色を想像によって再構築し、どこか象徴性を帯びるゴーギャンの画風はゴッホの作品とはかなり印象が異なります。
▼共同生活の時期に描かれたゴーギャンのブドウの収穫、人間の悲惨。ゴーギャンの記憶と想像から描かれたこの作品をゴッホは称賛しました。
(ポール・ゴーギャン / ブドウの収穫、人間の悲惨 / 1888年 / オードロップゴー美術館)
ゴーギャンに全てを想像に基づいて描いてみることを提案され、実践してみたゴッホですが、完成した作品は満足できるものではありませんでした。対するゴーギャンは絵の具を厚塗りするゴッホの描き方に批判的だったようです。
ゴッホとゴーギャンがお互いに影響を受け合いそれが作品にどの程度反映したのかどうかは分かりませんが、少なくとも異なる手法で絵を描く相手と生活を共にすることで、自らの絵画への取り組み方、画家としてのスタイルにより自覚的になったと想像できます。
▼ゴーギャンの描いたひまわりを描くゴッホの肖像(本展覧会未出品)。作品の描かれた11月はひまわりの季節ではないので、ゴーギャンの想像によるものと言われています。
(ポール・ゴーギャン / ひまわりを描くゴッホの肖像 / 1888年 / ファン・ゴッホ美術館)
共同生活の後、精神障害による発作に苦しんだゴッホは、アルルから二十数キロ離れたサン=レミの療養院に入院します。
二人は二度と会うことはありませんでしたが、1890年7月29日にゴッホが亡くなるまで、手紙を通じて交流は続きました。
ゴッホとの共同生活を終えたゴーギャンはヨーロッパ文明および「人工的・因習的なもの全て」から逃れるためにタヒチへ旅立ちます。
▼ゴッホの死から11年後に描かれた肘掛け椅子のひまわり。フランスからわざわざひまわりを取り寄せたゴーギャンはゴッホを思いながらこの絵を描いたのでしょうか。
ゴッホとゴーギャンという二人の天才画家の関係性に焦点を当てた展覧会ではありますが、それ以外にも、『織機と織工』などのゴッホの初期作品、『タヒチの牧歌』などのゴーギャンのタヒチ時代の絵画、クロード・モネやカミーユ・ピサロなどの作品も展示されています。
音声ガイドは小野大輔&杉田智和
「ゴッホとゴーギャン展」の音声ガイドを務めるのは声優の小野大輔さんと杉田智和さん。ゴッホとゴーギャンそれぞれの手紙を二人が読み上げます。作品解説はTBSアナウンサー堀井美香さん。
▼ゴッホ役の小野大輔さん
(出典:ゴッホとゴーギャン展HP)
▼ゴーギャン役の杉田智和さん
(出典:ゴッホとゴーギャン展HP)
貸出価格:1台 520円(税込)
展覧会概要|アクセス・チケット
会期:2016年10月8日(土) – 12月18日(日)※東京会場は終了しました。
開館時間:9:30 – 17:30
※金曜日、10月22日(土)、11月2日(水)、11月3日(木)、11月5日(土)は20:00まで
休館日:月曜日、10月11日(火)
※10月10日(月)は開室
会場:東京都美術館 企画展示室
〒110-0007 東京都台東区上野公園8-36
チケット(当日券):一般1600円・大学生1200円・高校生800円・65歳以上1000円
※中学生以下は無料
※10月8日(土)から10月30日(日)までの土曜日、日曜日、祝日は高校生無料観覧日(学生証の提示が必要)
詳細は → ゴッホとゴーギャン展ホームページでご確認ください。
巡回情報|愛知県美術館で開催
「ゴッホとゴーギャン展」は東京都美術館での開催以降、愛知県名古屋市にある「愛知県美術館」に巡回します。
会期は2017年1月3日(火)から2017年3月20日(月・祝)まで。
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※会期が終わっているものもありますが、写真付きで作品を紹介しているので見てみてください。
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