育住近接×職住近接は子育てにメリットが多いけどハードルも高い

育住近接×職住近接

都心回帰の影響もあってか職住近接という言葉をよく耳にします。職住近接とは、文字通り職場の近くに住むという意味です。職場の場所によっては家賃の問題などがあってなかなか実現するのが難しいケースもあるでしょうが、通勤時間を削減してその分を家事育児の時間に使えるので、子どもが小さいうちはかなり助かります(我が家も通勤時間は短め)。

最近、職住近接に加えて育住近接という言葉も出てきたようですね。自宅と保育園や学童などとの距離が近いことを意味する言葉のようです。送迎にかかる時間が少なくなるので、職住近接同様、こちらも家事育児時間の捻出につながります。

時間の節約・有効活用という観点からすると、この育住近接と職住近接の組み合わせは子育て世帯にとってかなりメリットが多いと思います。今回は、我が家の経験も踏まえながら「育住近接×職住近接」について考えます。

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通勤時間と子育て

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子育て中の忙しない生活をなんとか回していくためには無駄な時間をできるだけ省くことが重要だと思います。個人的に特に無駄だなぁと感じるのは通勤時間です。

長時間通勤は体力的にもしんどいですし、ストレスもたまります。保育園・幼稚園の送迎や緊急時の呼び出しへの対応を考えても長時間・長距離通勤は子育て世帯にとって足枷になると言えるでしょう。

ちなみに、NHK放送文化研究所が定期的に行なっている国民生活時間調査(2015年10月実施)によると、日本における通勤時間(往復)の平均は東京圏が1時間45分、大阪圏が1時間27分、その他の地域が1時間10分だそうです。

参考:東京圏の生活時間・大阪圏の生活時間|NHK放送文化研究所

この数字はイギリス(約60分)やアメリカ(約50分)よりも長く、日本の特に大都市圏の通勤時間は国際的に見てもかなり長いと言えそうです。ただでさえ長時間労働が問題になっている中、通勤にも時間を取られてしまっては家事育児を含め生活のさまざまな場面にひずみが出てくるのも当然だと感じます。

東京圏の往復の通勤時間1時間45分は、週5日勤務でざっくり計算すると1ヶ月で35時間。1年間で420時間にも上ります。かなりの時間ですね。この時間を家事育児や子どもと遊ぶ時間、保護者が息抜きする時間に使えるとしたら、忙しない日常を少しはマシなものにしてくれるのではないでしょうか。

育住近接で削減できる送迎の時間と労力

時間

前述した通り、育住近接とは自宅と保育園や幼稚園、学童などが近いことを意味する言葉です。保育所付きマンション開発を行なっている大手不動産企業や不動産仲介サイトなどでよく見かけます。2018年あたりに「最近の住まいのトレンド」といった形容のされ方で出現したようです。国土交通省の議事録にも使われています。

共働き層の増加によって、生活者が住まいに求める要素は、住戸や生活のゆとりといった居住空間に対するニーズから、日常生活の利便性やタイムセービングといった暮らしやすさに変化してきている。暮らしやすさが重視されるなかで、「職住近接」に加え、「育住近接」というトレンドも生まれている。

(引用元:第5回 働き方改革を支える今後の不動産のあり方検討会 議事概要|国土交通省

育住近接の長所は子どもの送迎に要する時間と労力の削減だと思います。例えば保育園の送迎に自転車で片道15分かかる場合と徒歩5分の場合では、時間にすると往復で20分の差が出てきます。さらに雨天時には、自転車のレインカバーを用意したり、レインコートを着たり、子どもにレインコートを着せたり、長靴を履かせたりとなかなか大変です。うちの場合は、子がイヤイヤ期真っ盛りのときに自転車に全然乗ってくれないという問題が発生して苦労しました。

人によっては、数駅先の保育園に通わせているケースもあるでしょうから、送迎の負担はかなりのものです。

我が家は保育園から自転車で15分ほど。めちゃくちゃ遠くはないものの、徒歩通園している他の子どもを見かけると、うちももっと近ければなぁと思うことは多々あります。

保育園や幼稚園が自宅の近所にあれば、送迎に要す時間は短くなりますし、労力もかなり軽減できるでしょう。

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育住近接×職住近接のメリット

職住近接の良い点はとにかく通勤時間を短くできること。育住近接は送迎が楽になり時間も節約できます。

この2つの組みわ合わせ、自宅から職場も保育園も近いという環境は上記の点以外にもメリットが多いです。以下、私が感じている「育住近接×職住近接」のメリットを挙げてみたいと思います。

ちなみに、私たち夫婦の職場、保育園までの所要時間は下記の通りです。

自宅から職場までの所要時間

妻:自転車で約10分
私:在宅フリーランス(所要時間0分)

自宅から保育園までの所要時間

自転車で約15分

園からの突然の呼び出しへの対応

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育住近接と職住近接の組み合わせのメリットとしてまず挙げられるのは、保育園や幼稚園からの急な呼び出しに対応しやすいということです。

小さな子どもはしょっちゅう体調を崩します。私も子どもが熱を出して保育園から早めにお迎えに来て欲しいと連絡が来ることがけっこうな頻度でありました。特に入園したばかりの1歳児の頃は発熱の連絡なく1ヶ月間を乗り切ったことが1度もなかったと記憶しています。

自宅・職場・保育園の距離が近ければ近いほどすぐにお迎えに行くことができます。

地震など、緊急時の対応

職場・保育園・自宅それぞれの距離が近ければ大きな地震など、緊急時にすぐに園に駆けつけられますし、そこから帰宅するのも簡単になります。

我が家は夫婦ともに実家が遠く、祖父母の助けは得られないので、全て2人でなんとかしなければなりません。2人ともお迎えにいけないなんていう事態は絶対に許されない状況なので、子どもをすぐにピックアップできるというのは心理的にも安心感があります。

帰宅後の家事育児

通勤やお迎えに時間が取られなければ、帰宅後の家事育児にも時間を割くことができます。

子どもの性格や体質にもよるかと思いますが、無駄な時間を減らすことができれば、睡眠時間の確保や自由時間にもつながるかもしれません。私たち夫婦は、子が早く寝てくれた後に2人で海外ドラマを観るのが日々のリラックスタイムとなっていました(最近は早く寝てくれないのでこの習慣は残念ながらしばし休止中)。

当時はそこまで意識していませんでしたが、こういった時間を持つことができたのも、通勤などに時間を取られずに済んでいたことが影響しているように思います。

満員電車のストレスからの開放

職住近接のメリットとして個人的にかなり大きいのは、満員電車を避けられるということです。私は中高時代に乗車率200%の埼京線に乗って通学していた経験がほとんどトラウマのようになっており、もうとにかく満員電車が嫌で嫌で仕方ないので、現在の在宅フリーランスという働き方には満足しています。

思い返せば会社員時代も、なるべく満員にならない路線を避けたり、職場に近いところに住んだりといった工夫をしていました。基本は妻の職場の徒歩圏内という基準での住まい選びだったので、満員電車を完全に避けることは不可能でしたが、なるべくそのストレスが少なくて済むように住まい選びはじっくりと戦略を練って決めていました。

育住近接と職住近接を阻む高い壁

ここまで、育住近接と職住近接の組み合わせのメリットについて考えてみましたが、そうは言ってもこの2つを両立するのはかなり難易度が高いということも事実です。我が家の場合は私が在宅ということで住まい選びも妻の職場との距離だけを気にすれば良かったですし、保育園も希望の園に入ることができました(かなり苦戦はしました)。でも、共働きの場合はお互いの職場が離れていることもあるでしょうし、多くの地域で保活は熾烈を極めます。

今の日本社会の現状を考えると、育住近接と職住近接が子育て世帯にとってメリットが多いとはいえ、それを阻む壁もかなり高いものがあると言えるでしょう。

また、職場が都心にあれば、家賃はかなり上がるでしょうし、住宅選びの選択肢も限られたものとなります。特に賃貸だと魅力的なファミリー向け物件は少なく、物件の近くに保育園がないこともあります。あったとしても入れるとは限らないのが現状です。

子どもを遊ばせられる公園の有無や保育園・幼稚園の園庭の広さ、自治体の子育て支援の充実度など、子育て環境も考慮しなければなりません。

こういった状況を考えると、育住近接×職住近接はあくまでも理想であって万人が選択できるものではないと言えそうです。

ただ、住まいを選びを含め、物件と職場、保育園・幼稚園の距離を考慮に入れて、できる限り通勤や送迎の時間と労力を削減するための工夫をすることは、日本のハードな子育て環境で生きていく上で無駄にはならないと思います。

参考サイト

仕事と居住の空間的課題|都市住宅学 68号 2010 WINTER
シングルマザーになったとき、職住近接を実現させてくれた港区|SUUMO
東京圏の生活時間・大阪圏の生活時間|NHK放送文化研究所

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