のん主演「この世界の片隅に」感想|日常と戦争の相克を描いた傑作

2016年11月12日(土)に公開された映画『この世界の片隅に』を観てきました。傑作でした。

映画評論家の町山智浩さんなど、すでに多くの人が言っているように2016年のベスト映画はこの作品だと私も思います。

※東京国際映画祭のプレミア上映と初日の2回観ました。

『この世界の片隅に』の原作はこうの史代の同名漫画。監督は『アリーテ姫』や『マイマイ新子と千年の魔法』の片渕須直。主人公すずの声を演じるのは、のん(本名:能年玲奈)です。本作はクラウドファンディングで資金を集めて制作されたことでも注目を集めています。

映画賞も数多く受賞し、2017年3月3日に行われた第40回日本アカデミー賞では、大ヒット映画『君の名は。』を抑えてみごと最優秀アニメーション賞を受賞しました。

以下、『この世界の片隅に』の感想と作品の制作背景、見どころ、すでに映画を観た人の評価、関連イベント情報などをまとめました。

※感想にはネタバレを含みます。ネタバレは最小限に留めていますが、完全にスルーしたい方は原作・キャスト・音楽の項目からお読みください。

▼『この世界の片隅に』のブルーレイが発売されました

『この世界の片隅に』感想|日常(平和)と戦争の相克

以下、映画を観た感想です(ネタバレ注意)。ちなみに観賞時、原作未読です。

日々の営み。戦時下の笑顔

『この世界の片隅に』は、戦時中の人々の生活の細部を丹念に描くことで、日々の営みの尊さを表現しています。

のん演じる主人公すずの温和な声、彼女が絵に描く広島の街並みや瀬戸内海の景色、仰ぎ見る青空、無邪気に笑う晴美の笑顔。戦時中であることを忘れさせる質素ながらも平穏な日々の光景の連続は、私たちが「悲惨な時代に生きた可哀想な人たち」とイメージしがちな戦時中の人々にも当然あっただろう「当たり前の日常」に思いを至らせます。

「すぐ目の前にやってくるかと思うた戦争じゃけど、今はどこでどうしとるんじゃろ」

すずが嫁いだ北條家のある呉は日本一の軍港の街。戦況の悪化に伴いアメリカ軍の空爆の標的となりますが、作中では度重なる空襲の中でも笑顔を失わないで前向きに生きる主人公すずと北條家の人々の姿が描き出されます。すずの人を和ませる性格と幼い晴美の無邪気さが明るい雰囲気を漂わせ、随所にみられる「笑える場面」と作品の根底に流れるユーモアの力が、息が詰まりそうな辛い状況に拮抗するのです(笑える場面では、すずの声を演じるのんのコメディエンヌとしての才能が存分に発揮されています)。

また、少なくなっていく配給を近所で摘んできた野花によって補い、少しでも満腹感が味わえる料理を作るために工夫を凝らすすずの姿には、日常を脅かす戦争に必死で抵抗する市井の人々の力強さが表現されています。

喪失と再生。よみがえる日常

空襲は激しさを増し、そこに生きるすずたちの「何気ない日常」は徐々に侵され、破壊されていきます。作品全体を通奏低音のように流れていた「戦争の音」がここにきて激しく掻き鳴らされ、すずは自身の右腕と大切な人とを失います。そして8月6日、広島に原爆投下。爆心地から20キロ離れた呉にも閃光と轟音が響き、すずは巨大なキノコ雲を目撃します。

崩れ去った家の前で立ち尽くす女性、我が子の名を叫ぶ母親、被ばくして黒焦げになりながらも広島から呉まで歩き続け力尽きた男、その男が息子だと気づくことすらできなかった母親。玉音放送を聞いて泣き崩れるすず。ここにきて作中に描かれる「戦争の悲劇」はピークを迎えます。

しかし本作はここで終わりません。喪失のあとの再生をも(非常に美しい仕方で)描いているのです。

1945年の広島の悲劇を知る私たちは、冒頭から繰り返し描かれる日常がいずれ破壊されてしまうという悲しみをどこかに抱えつつ映画を観ていきますが、束の間のものであったはずの日常が、作品終盤、徐々に回復していく兆しを見せるのです。

戦争によって脅かされ、浸食され、(徹底的に)破壊された日常が、新たな出会いと共にその力を取り戻していく。その様子が、言葉でなくアニメーションだけで表現されます。「平穏な日常」、「破壊と喪失」、「再生」という、本作全体の流れを凝縮したかのような場面によって戦争に打ち負かされそうになった日常が再び立ち上がるのです。

ただただ普通に生活すること。生活できること。それを平和と呼ぶとするなら、本作『この世界の片隅に』は日常=平和と戦争の相克を描いた映画であると言えるでしょう。そして、日常=平和とは空襲や原爆によってすら根こそぎにできない強さを持ち、生き残った人々によって必ず再生され、営まれるものなのだと思います。

不意に差し挟まれる「他者」の視点

『この世界の片隅に』は基本的に主人公すずの視点から描かれますが、随所に他者の視点が差し挟まれる瞬間があります。

例えば玉音放送が流れたあと、呉の街に太極旗(現在の韓国の国旗)が掲げられる場面です。

玉音放送を聞き、戦争に「敗れた」ことを知ったすずは悔しさと無力感、喪失感、生活を破壊された怒りとがない交ぜになった感情が爆発し泣き崩れます。しかしそれはあくまでも「日本人」の視点であって、同じ地域に暮らしていた「朝鮮人」からすれば、玉音放送は植民地支配からの祖国の解放を意味するわけです。太極旗が掲げられるシーンはほんの一瞬ですが(原作では主人公すずがより踏み込んだ発言をしています)、あの描写には、8月15日という日が立場の異なる人にとっては「敗北」ではなく「勝利」を意味することを暗に示しています。現に韓国では8月15日を光復節、北朝鮮では解放記念日と呼び、大日本帝国からの独立を祝う日とされています。

また、これは他者という言葉が適切かは分かりませんが、この作品には昆虫や動物、植物が多く描かれています。砂糖の配給がなくなり人々が思案する一方で、カブトムシがたっぷりと滲み出た樹液を吸うカットが挿入され、砂糖の壺にアリが群がり、米軍機を砲撃するシーンでは手前に普段と変わらぬ様子で蝶が飛んでいます。困窮する人間、殺し合う人間をよそに、まったく異なる世界を生きる昆虫を画面に登場させることで私たち人類のある種の滑稽さが浮き彫りにされます。

上映中、観客はすずに寄り添い、同じ時代を生きているような感覚を覚えますが、そこに現れるのは決して一面的な世界ではありません。画面の端々に「この世界」に生きる他者がその存在を(さりげなく)主張することで作品全体に立体感が与えられるのです。このような細かな演出は一度観ただけでは把握しきれないでしょうから、この映画は観れば観るほど新たな発見があり、味わいが増す作品であると思います。

北條すずと黒村徑子。対照的な二人の女性

本作には対照的な人生を歩む二人の女性が登場します。一人は主人公のすず、もう一人はすずの夫周作の姉黒村徑子。

すずは18歳で見ず知らずの男性の家に嫁ぎ、わけもわからぬままに家事に追われる毎日を過ごします。

一方の徑子は当時のいわゆるモガ(モダンガール)。彼女は自由恋愛で夫と結婚し、夫婦で時計店を営んでいました。

戦時中の女性というと私たちはすずのような封建社会の古めかしい慣習に従って生きる女性をイメージしがちだと思いますが、当時は黒村徑子のように自由に生きることを志向した女性も多くいました。

とても印象的だったのは、徑子がすずに「すずさんは無理やり見知らぬ家にお嫁に来させられて自分で何も決められずさぞつまらない人生だったでしょう。私はいろんなものを失ったけれど結局は自分で選んだ人生だから後悔はないよ」(うろ覚えなので正確ではありません)といった言葉をかける場面です。夫を失い、店を失い、子を失いながらも自分で決めた人生だから後悔はないと言い切る徑子。おそらく映画の登場人物の中で最も多くを失ったであろう彼女の姿は、すずとはまた違った形で、当時の女性の力強さを私たちに伝えてくれます。

映画の終盤、原爆で母親を失い孤児となった少女を風呂に入れようと皆が騒いでいるとき、ふと後ろを向いて晴美の服を取り出し「去年の晴美の服、まだ着られるかしら」とつぶやく徑子の姿は強く印象に残りました。

自らの意志とは関係なく見知らぬ家に嫁ぐという今の私たちから見ると悲惨とも言いたくなるような環境で、それでもたんぽぽの綿毛のように降り立ったその場所に根を張り自分の居場所を見つけて懸命に生きるすず。自分の人生を自分で選びそれを後悔しないと言い切る徑子。この映画の表の主人公がすずであるなら、裏の主人公は黒村徑子であると思います。

ともに大切なものを失いながらも前を向き生きようとする彼女たちが、戦後の日本でどのような人生を送ったのか、想像を巡らせずにはいられません。

原作・キャスト・音楽

ここからは、作品の見所や制作背景について紹介します。

原作はこうの史代の同名漫画

konosekai-kounohumiyo(こうの史代 出典:マンモTV)

映画『この世界の片隅に』の原作はこうの史代の同名漫画。広島県の軍港・呉を舞台に戦中から戦後にかけて懸命に生きる人々の姿を主人公すずの視点を中心に描いた作品です。『漫画アクション』(双葉社)上で連載され、2009年には第13回文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞を受賞。単行本(上・中・下)も発売されています。

こうの史代は広島県広島市西区出身。戦争と原爆投下が市井の人々に与えた甚大な影響を何気ない日常の描写によってあぶり出した代表作『夕凪の街 桜の国』の舞台も広島です。

こうの史代は片渕須直が監督を務めたテレビアニメ『名犬ラッシー』に大きな影響を受けたとインタビューで語っています。そんな監督から『この世界の片隅に』の映画化の話が来てとても驚いたそうです。

人生というのはもともと真っ暗な道で、真っ暗ななかに「こういう人になりたい」「こういうものが作りたい」という方向にだんだんと灯りがともってゆくようなものだと思うんですが、監督の作品はまさに私のゆく手の灯りだったんです。その灯りに住んでる人から手紙がきたのでとても驚きました。『この世界』を描いている間は、ひとりで戦時中に暮らしているような孤独な気持があったので、一番見つけてほしかった作品を見つけてもらえた感じがしました。
出典:このマンガがすごい!WEB

▼原作の漫画『この世界の片隅に』

▼こうの史代の代表作『夕凪の街 桜の国』

監督は片渕須直

konosekai-katabuchisunao

『この世界の片隅に』の監督を務めるのは片渕須直。1996年、フジテレビの「世界名作劇場」で放送されたテレビアニメシリーズ『名犬ラッシー』の監督を務め、2000年には自身初となる劇場用長編アニメ作品『アリーテ姫』を監督。前作『マイマイ新子と千年の魔法』(2009年)では、配給宣伝がほとんど行われない中、有志によるネット署名の活動などにより評判が広がり、最終的には1年以上のロングランを実現しました。

かつては宮崎駿の『魔女の宅急便』(1989年)や大友克洋の『MEMORIES』(1995年)の制作にも参加。映画やテレビアニメ以外にも、プレイステーション2用ソフト『エースコンバット04』(名作です!)のゲーム内ムービーや東日本大震災の復興支援テーマソング『花は咲く』(アニメーション版)の監督を務めています。

▼NHKの復興支援ソング『花は咲く』では、こうの史代がキャラクターデザインを担当。
konosekai-hanahasaku出典:nhk.or.jp

▼『マイマイ新子と千年の魔法』については以下の記事で感想や原作との違いなどについてまとめています。

実力派揃いの声優陣|主演はのん(能年玲奈)

▼『この世界の片隅に』制作現場を見学するのんこと能年玲奈
konosekai-non出典:のんオフィシャルブログ

主人公すずの声を演じるのは本作がアニメ映画初出演となるのんこと能年玲奈。のんに改名後、最初の本格的な仕事となります。

片渕須直監督は最初から主人公の声優にのんを考えていたとのこと。「主人公はのんちゃんしか考えられなかった。そう思い原作本を送ったら、メールが来ました。プリントアウトしてサイフに入れています。」(出典:映画.com)。

また、原作者のこうの史代は「のんさんの声によって物語の中に明るさや、原作にはない素直さが入ってきました」とのんの演技を称賛しています(出典:コミックナタリー)。

のんは「感情が沸きたった時に、がーって絵を描いているところがすごく共感しました。すずさんは、ぼーっとしていると言われながらも、パワフルでポジティブなところが好きです」と主人公すずについての印象を語っています(出典:朝日新聞デジタル)。

絵が好きなところや大切なもの(彼女は本名を奪われました)を失いながらも懸命に生きる姿など、のんとすずには重なる部分が多くあるのかもしれません。映画を観た感想としては、彼女の声によってすずというキャラクターに命が吹き込まれたと言っても大げさではないほどに素晴らしい演技だったと思います。また、戦時下の生活を描きな
がらも笑える場面が多い本作ですが、随所でのんのコメディエンヌとしての能力の高さが発揮されています。

「能年玲奈」から「のん」に改名し、再出発する彼女にとって最高の作品に出会えたのではないでしょうか。

第38回ヨコハマ映画祭の審査員特別賞を受賞するなど、本作におけるのんの演技は各方面で非常に高い評価を受けています。

のん以外にも、すずの夫である北條周作を演じた細谷佳正(広島県尾道市出身で、ナチュラルな広島弁を話します)、幼馴染の水原哲役の小野大輔、すずの妹浦野すみ役の潘めぐみなど、テレビアニメや劇場公開アニメの声優として活躍する実力派のキャストが揃っています。

その中でも、黒村径子(私の中での裏主人公)という難しい役どころを見事に演じ切っている尾身美詞と、彼女の娘ですずを慕う少女黒村晴美の声を演じた稲葉菜月は特に素晴らしかったです。

稲葉菜月は『アナと雪の女王』でアナの幼少期の声も務めています。本作に通底している戦時下ながらも明るい雰囲気は、すずの声と晴美の屈託のない笑い声によって支えられていると言っても過言ではないと思います。

音楽はコトリンゴが担当

konosekai-kotoringo出典:コトリンゴ オフィシャルページ

『この世界の片隅に』の音楽を担当するのはシンガーソングライターのコトリンゴ。ニューヨークのバークリー音楽大学を卒業後、2006年にデビュー。2013年からはキリンジ(KIRINJI)に参加しています。

本作の主題歌『悲しくてやりきれない』はザ・フォーク・クルセダーズの曲をコトリンゴがカバーしたもの。2010年に発売されたアルバム『picnic album 1』に収録されたものを本作のためにリアレンジした楽曲になっています。

コトリンゴは片渕須直監督の前作『マイマイ新子と千年の魔法』でも主題歌(『こどものせかい』)を歌っています。

▼収録曲リストや楽曲制作の背景についてはこちらにまとめています。

『この世界の片隅に』制作背景・見どころ

クラウドファンディングによって資金を集める

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『この世界の片隅に』はクラウドファンディングによって制作資金を集めたことでも話題になりました。日本では一般的に複数の企業・関係者が製作委員会を作って資金集めを行います。しかし、『この世界の片隅に』は原作漫画の評価は高かったもののテレビアニメなどになっていないことから資金集めに難航、それでもなんとか活路を見出そうとクラウドファンディングに挑戦します。

利用したのはサイバーエージェントが運営するクラウドファンディングサイト「Makuake(マクアケ)」。総額2億円以上とされる製作費のうちの2000万円を目標額としてスタートした結果、支援金39,121,920円、支援者3374人(当時国内最高)を達成。目標額の2倍近い約4000万円を集めることに成功しました。

支援コースは2000円、5000円、10,000円、100,000円、300,000円、1,000,000円(税抜)の6コース。1万円コース以上は映画のエンドロールに名前がクレジットされます。サイトを確認したところ100万円コースの申込者はいないようですが、10万円コースに89人、30万円コースに13人もの人が申し込んでいます。

全コースの支援者に映画の最新情報がメールで送信され、それを受け取った支援者それぞれがSNSやブログで拡散するという流れができ、結果的にプロモーションにも繋がっているとのこと。

クラウドファンディングで映画の制作資金を集めるという試みは今後広がっていくかもしれません。そうなれば、成功例として本作『この世界の片隅に』が第一に挙げられることになるでしょう。

参考:アニメ映画『この世界の片隅に』プロデューサーが語る、クラウドファンディングの正しい活用法

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舞台は広島県・呉|徹底的な時代考証

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『この世界の片隅に』の舞台は戦時中に軍港だった広島県の。日本帝国海軍史上最大の戦艦である大和の建造も行われるなど、海軍の重要拠点だったことからアメリカ軍に何度も空爆を受けました。

原作者のこうの史代は呉を舞台に選んだ理由を次のように語っています。

前作『夕凪の街 桜の国』は編集さんに勧められて描いたんです。するといろいろな反響があって、広島県民以外の方が広島や原爆に興味を持って下さったんですね。でも私はほかの地域の戦災について知ろうとしたことはほとんどなかったんです。読者に勇気をいただいて、原爆でない別の戦災、ふるさとでない場所の戦災を描きたいと思い呉を舞台に描きました。
出典:このマンガがすごい!WEB

また、同じインタビューで、「祖母と母が生まれ育った街ですし、私自身、呉が大好きだったので。」とも語っています。本作を描くにあたり、こうのは主人公すずが生きた時代の年表を作り、徹底的な時代考証の上で作品を完成させています。

映画の製作にあたって監督の片渕須直も膨大な資料を読み込んだそうです。原作に描かれていない建物を再現したり、戦艦大和が呉に入港した日の天気まで調べて作品に反映させています。さらには、当時の写真や存命中の方への取材を通して、広島の街を歩く人々一人一人に実在のモデルを設定するなど、細部への力の入れようには驚嘆すべきものがあります。

場所や土地、事象など調べたことを取り入れていく事で、実際の場所と作品が地続きになる。リアリティを追求することで、画面の外にある景色や風景まで無限に広がっていく。観ていただいた方に、そんなふうに感じてもらえると良いなと思います。
出典:片渕須直監督 特別インタビュー(練馬アニメーションサイト)

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映画を観た評論家の評価は?感想まとめ

すでに映画を観た人たちの感想をまとめました。

▼映画評論家の清水節氏のツイート。

▼映画・音楽ジャーナリストの宇野維正氏のツイート。リアルサウンド映画部などで映画のレビュー記事を執筆しています。

▼アニメやゲーム、サブカルチャーに関する評論を執筆している中川大地氏のツイート。

▼能年玲奈に関する著書もある中森明夫氏のツイート。

この他にも映画評論家町山智浩さんは「2016年の邦画、洋画を含めてナンバー1」と絶賛し、ライムスターの宇多丸さんはTBSラジオ「ウィークエンドシャッフル」内で「5000億点」、「日本映画史に残る傑作」と興奮気味に語っていました。

このように、作品を鑑賞した方からは絶賛・賞賛の声が上がっています。

こうの史代の傑作漫画と片渕須直という才能の出会い、クラウドファンディングによる資金集め、のん(能年玲奈)の復活劇、上映館数の飛躍的な拡大、全方位からの絶賛の嵐(批判もありますけどね)・・・これだけの要素が積み重なればそりゃあ特別な作品になってしまいますよね。

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各映画賞の受賞結果

『この世界の片隅に』は各映画賞でも非常に高い評価を受けています。以下、受賞結果の一部をまとめました。

第40回日本アカデミー賞

2017年3月3日(金)、第40回日本アカデミー賞の授賞式が行われ、『この世界の片隅に』が最優秀アニメーション賞を受賞しました。

200億円を超える記録的大ヒット映画『君の名は。』を抑えての受賞です。

壇上で片渕須直監督は、「6年以上かかって作った映画なのですが、あきらめなくてよかったです」と喜びを語りました。

▼受賞をお祝いする、のん、片渕須直監督、コトリンゴの三人。

お祝い中〜〜🎂✨

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広島国際映画祭2016

映画の舞台でもある広島で行われた広島国際映画祭2016のヒロシマ平和映画賞を受賞しました。映画『この世界の片隅に』にとって初の受賞です。

第90回キネマ旬報ベスト・テン

第90回キネマ旬報ベスト・テンでは、シン・ゴジラ等を抑えて日本映画のベスト・テンの第1位に選出されました。アニメーション映画が第1位に選ばれたのは、1988年の宮崎駿『となりのトトロ』以来、28年ぶり2度目。

また、日本映画監督賞を片渕須直監督が受賞し、これはアニメーション映画の監督としては史上初の快挙となりました。

第38回ヨコハマ映画祭

第38回ヨコハマ映画祭では、作品賞審査員特別賞(のん)を受賞しました。ヨコハマ映画祭は市民が始めた映画ファンによる映画祭で、『キッズリターン』で作品賞を受賞した北野武が「こんなに公正でありがたい映画賞はない」と語るなど、映画人からも愛されており、受賞者の授賞式への出席率が高いことでも知られています。

2017年2月5日(日)関内ホールにて、上映会および表彰式が行われました。
ヨコハマ映画祭公式HP → http://yokohama-eigasai.o.oo7.jp

あらすじ・予告編

― 『この世界の片隅に』あらすじ -

昭和19年、故郷の広島市江波から20キロ離れた呉に18歳で嫁いできた女性すずは、戦争によって様々なものが欠乏する中で、家族の毎日の食卓を作るために工夫を凝らしていた。しかし戦争が進むにつれ、日本海軍の拠点である呉は空襲の標的となり、すずの身近なものも次々と失われていく。それでもなお、前を向いて日々の暮らしを営み続けるすずだったが……。
出典:映画.com

- 予告編 -

海外版の予告編には、本編でカットされた未公開シーンが出てきます。以下の記事に情報をまとめました。

『この世界の片隅に』原作・関連書籍・イベント情報

●本作の舞台である広島県呉市にある呉市美術館で『マンガとアニメで見る こうの史代「この世界の片隅に」展』(会期:2016年7月23日 ― 11月3日)が開催されています。※終了しました。

●スタジオジブリの元アニメーターが経営する東京・西荻窪の『ササユリカフェ』で本作の貴重な原画や資料を展示したイベントが行われます。

『この世界の片隅に』ができるまで~『マイマイ新子と千年の魔法』からの軌跡~in ササユリカフェ(開催日時:2016年10月13日 ― 11月28日)※終了しました。

― 関連商品 -

▼『この世界の片隅に』のブルーレイが発売されました。

▼この史代の原作漫画『この世界の片隅に』上・中・下

▼映画の原画や設定資料など、関連資料も満載の公式アートブック

▼のんが広島県呉市を旅するフォトブックが発売中です。

▼オリジナルサウンドトラック

▼オリジナルサウンドトラックの制作背景などについてはコチラ

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▼『この世界の片隅に』の海外版予告編に未公開シーンを発見しました。

▼『この世界の片隅に』のオリジナル・サウンドトラックの紹介記事。

▼片渕須直監督の傑作『マイマイ新子と千年の魔法』の感想や原作との違いについて。

▼ユーリー・ノルシュテイン監督特集上映の感想。